少子高齢化に伴う働き手の不足、そして新型コロナウイルスの感染拡大による人どうしの接触を敬遠する風潮により、日本国内で店員のいない無人コンビニの普及に向けた取り組みが加速している。中国では数年前から無人コンビニが出現しているが、このほど北京市の地下鉄駅に初めての無人コンビニが29日に試験オープンした。
北京地下鉄初の無人コンビニがオープンしたのは、地下鉄7号線の歓楽谷景区駅の構内だ。7号線のシンボルカラーであるオレンジ色を基調とし、地下鉄のトンネルを意識したような形状の店舗で、改札口のようなゲートを通るとそこは無人の空間だ。店内にはおにぎりや生鮮食品、乳製品、各種飲料、菓子類、紙類、化粧品など500種類あまりの商品が陳列されていて、北京らしさを持つ商品も売られているという。
営業時間は無人ではあるものの24時間ではなく、午前6時から午後11時までとなっている。電車の運行時間帯に合わせての営業ということなのだろう。また、店の入り口には「駅構内での飲食はご遠慮ください。車両内での飲食は禁止です」との注意書きが。中国では以前電車内での飲食がしばしばトラブルを引き起こし、マナー改善の観点から各地の地下鉄車内での飲食が禁止された。残念ながら、ここで買ったものをすぐに飲み食いすることはできないようだ。
ところで、先に述べたとおり中国ではすでに数年前から無人コンビニが出現し、そのあり方について試行錯誤が繰り返されている。利用者が多く見込まれる地下鉄構内ではもう少し早く無人コンビニができていてもおかしくなさそうだが、そこにはちょっとした事情があった。北京市の地下鉄構内には17年間、コンビニが設置できない状態が続いていたのだ。
2002年、中国コンビニ大手・物美が北京市の地下鉄駅に14カ所のミニコンビニを設置して営業を開始した。しかし、翌03年に韓国・テグの地下鉄で火災事故が発生したさい、現地当局が消防上の理由から駅構内のコンビニを閉鎖するよう求めたことがきっかけで風向きが変わり、04年には北京市が「都市軌道交通安全運営管理方法」を定め、駅のホームやロビー、避難通路内の商業施設設置を禁止し、露店などともにコンビニも北京市の地下鉄構内から締め出されたのである。
その後、16年には華潤が複数のコンビニ出店を計画したものの結局実現せずに終わった。状況に変化の兆しが出たのは19年のことで、市が「新たな地下鉄駅などの交通の中枢に商業施設を開設することを認める」との通知を出し、コンビニ再出店への機運が高まった。そして、今年7月に5号線の和平里北街でローソン、6号線青年路駅で中国ブランドのDELIGOGO、7号線菜市口駅でEC大手の京東によるコンビニ店舗が同時オープンし、北京地下鉄の「新・コンビニ時代」が始動した。
この3店舗はいずれも有人形態での営業だが、地下鉄車内で商品を注文し、下車後に店で受け取れるサービスを行うなど、市民の生活をより便利にするためのサービスを展開しているという。今後、北京市の地下鉄構内にも上海や広州など他の大都市の地下鉄同様に、無人コンビニを含めた店舗が続々と出現し、地下鉄利用者の「暮らしの質」をより高めてくれることだろう。
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