中国の朝ごはんの定番メニューといえばお粥。消化のよいお粥は胃腸にやさしく、朝食にもってこい。一方で上海では「泡飯」という日本でいう「お茶漬け」も朝食メニューとしてよく食べられる。
作り方は至極簡単で、
忙しい朝でもっと時間がないときは茶碗によそったご飯にあつあつのお湯をかけて混ぜてもよい。
これで泡飯が完成(あまりに簡単すぎて申し訳ないくらい)。
上海で泡飯が広く食べられるようになったルーツは1930年代に遡ると言われる。その頃、上海はアジアでも稀に見る一大商業都市であり、浙江省や江蘇省から多くの労働者が出稼ぎに来ていた。彼らの仕事は朝早くから始まるため、出勤に間に合うため最も手軽に食べられる泡飯が朝食の定番として食べられ、市民にも広まっていったという。
泡飯だけでは味がないため、食べるときは日本の米飯同様、おかずとなるものが必要となる。おかずとして代表的なものとしては、漬物類。腐乳(豆腐の麹漬け)、咸蛋(シエンダン:塩漬けアヒルの卵)といったものが定番。また、落花生と海苔を炒めたもの、油条(朝食メニューの記事でも紹介した、中華式揚げパン)等様々なものがある。これら以外にも、昨晩の残りのおかず、簡単な野菜炒めなどさっと作って付け合せにしたり。前の晩のおかずと一緒に煮て、味付け泡飯にしたりもある。
上海で今も昔も賑やかな商業地、淮海路(ホワイハイルー)では、泡飯によくあう漬物類を売る人気店がある。その名も「上海全国土特産食品商場」。
店内には上海を中心に、一部中国他地域の老舗特産食品を販売している。
ある日筆者が店内を見ていると、多くの人手がある売り場を発見し、お客の一人に尋ねてみたところ、「この店の漬物は大変美味しいので遠くから買いに来ている。」と教えてくれた。
その売り場は漬物やタレを販売しているが、スーパーでよく見る瓶や袋にパックされたものではなく、量り売りスタイルをとっている。量り売りはかつて上海の街中で多く見られた販売方法であるが、現在はほとんど見ることがない。この売り場では漬け物だけでなく、ごま油や酢、醤油も販売されているが、それも量り売りである。
さて、泡飯に合わせるものの定番は「腐乳(フールー)」。豆腐を麹で漬けたものだが、使う麹が紅麹か白麹かで紅白二種類ある。白い腐乳は「白腐乳(バイフールー)」、赤い腐乳は「玫瑰腐乳(メイグイフールー、玫瑰はバラの意味)」と呼ばれる。「玫瑰腐乳」とはなんとも華麗な名前である。この売り場でも当然ながら取り扱っている。
腐乳のお隣には各種タレが。
腐乳から少し離れた一角にはピーナツやニンニク、大根や青菜を使った漬物各種が並んでいる。
また、この売り場で意外なものが売られていた。
写真、奥の列左から2番目は「生姜片(シェンジアンピエン:生姜スライス)」の名称で販売されている。日本人にお馴染みの、寿司についている「ガリ」そのもの。もしやと思い購入して食べてみたところ、味もまさしくガリだった。上筆者はあまりにガリが恋しくなり、過去に自作したことがあるが、今後はこちらで買う予定である。海生活者でガリが恋しくなった方はここで「生姜片」を買うと良いだろう。
今回は紅白の「腐乳」を各5個(量り売りの為こんな注文もOK)とピーナツの漬物を購入した。こうして「泡飯」を美味しく食べられるおかずも入手したため、翌朝の朝食はもちろん泡飯。
小皿に盛られたこの日の泡飯の付け合わせは上から時計回りに腐乳、ピーナツの漬物、酔麩。腐乳は発酵食品で、麹を使っているため食べると酒の香りがする。豆腐は発酵がすすみ、湿ったチーズのような状態になっている。
「腐乳」は赤の方が値段が高いものの、個人的な意見としてはしょっぱめな味がひきたつ白腐乳の味の方が好きである。ピーナツの漬物は甘味が強い甘じょっぱい味付けで、日本人の舌にも合う味だと思う。酔麩は、麩を白酒と塩水をベースとしたタレに漬けたもので、食べると酒の香りとしょっぱさの味の混じり合いが美味である。この日もサラサラと美味しく泡飯を食べた。
日本人には馴染みのない食べ方の上海式お茶漬けの泡飯だが、一度食べるとその手軽さ、付け合わせと組み合わせる楽しさや美味しさを発見することだろう。朝食は朝の活力源でぜひ食べたい、でもなかなか凝ったものは作れない…という人は泡飯を試してみてはいかがだろうか。
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