香港では魚の皮食べる食文化が定着している。
勿論生で食べるのではなく、薄く衣をつけてパリパリに揚げた「炸魚皮」(魚の皮のから揚げ)と呼ばれるものを食す。
一昔前まで、この「炸魚皮」を食べようとする場合、お粥や麺屋 或いは火鍋屋へ行くのが常であった。
また筆者が初めてのお粥屋や麺屋に入る際、その店が美味しいかどうか見極める一つの目安が、「炸魚皮」があるかどうかにもなっている。
魚皮が置いてあるという事は 店で新鮮な魚を裁き、そこで裁いたフレッシュな魚皮を利用して「炸魚皮」を調理する。
その為、他のメニューについても自ずと”新鮮なものを揃えているに違いない”と判断をするのだ。
あるお粥店の外で売られていた炸魚皮
その日作ったものをその日のうちに販売している。
こちらは、人気の麺店で追加オーダーをした炸魚皮
炸魚皮はローカルチェーン店でも勿論人気
このチェーン店では、セットメニューに炸魚皮が付くものがあったのでオーダーしてみる。
炸魚皮の食べ方は人それぞれ。
お粥、麺、火鍋などに浸して食べるのも良し。そのまま、スナック代わりとして食べるのもまた美味である。
コンビニエンスストアやスーパーでは、炸魚皮をスナックにみたてた所謂「魚の皮チップ」も売られている。
そして数年前、シンガポール発祥で人気が出たものが「鹹蛋魚皮」だ。
鹹蛋、つまり鹹蛋は中秋節の月餅の中に入っている、アヒルの卵を塩漬けにしたものである。
その鹹蛋を魚のから揚げの衣部分にまぶしているのが「鹹蛋魚皮」だ。
甘塩っぱさと魚の皮のポリポリ食感が絶妙で、一度食べだしたら止められないスナックとして一世を風靡した。
シンガポール発祥のこのスナックは香港のみならず、日本でも話題になったはずである。
一時期は人気ブランドの「鹹蛋魚皮」を買うために、行列を作って購入する時期もあったほどである。
ただ、美味しいものには裏のマイナス面もある。
魚の皮は栄養がありコラーゲンも多いとは言っても、から揚げにする事でカロリーが増える。
その為、「炸魚皮」をあえて食べない健康志向の香港女性もいる。
そんな「炸魚皮」にさらに栄養がある鹹蛋をまぶすとくれば、食べすぎてはいけないものだと誰もが想像ができる。
それでも食べずにはいられない程の美味しさが「鹹蛋魚皮」なのだ。
食後に少しずつこの「鹹蛋魚皮」チップを食べるのが、筆者にとっても日々の至福のひと時という時期が暫くあった。
今では多くのブランドや味の種類も増えた「鹹蛋魚皮」
これはシンガポールの老舗人気ブランドのもの。
そうこうして、今ではこの少々お高いスナック「鹹蛋魚皮」がどこでも買えるまでになったのだが、最近のトレンドが出はじめている。
この1-2年、現地特有のメニューがあるようなちょっとしたバー等へ行くと、手作りの「鹹蛋魚皮」が”酒のつまみ”としてメニューにある店が増えてきた。
メニューにある「鹹蛋魚皮」をオーダーすると、まさに揚げたてでパリパリの「鹹蛋魚皮」が出てくるのである。
ただでさえ美味しい「鹹蛋魚皮」が、真空パックのスナックではなくその場で調理されたとあれば、それ程美味しいものはない。
そしてそれこそ、ビールに合う超絶にうまいツマミとして喜ばれているのだ。
ローカル食堂をイメージした人気の店でも、こんな風に揚げたての「鹹蛋魚皮」が
こちらはビクトリアハーバーを見ながら飲める少しセレブなテラスバー
そんなお洒落な店でも「鹹蛋魚皮」がメニューにあった。
揚げたてサクサク・アツアツの「鹹蛋魚皮」は、どんなツマミより魅力的だ
こうして、人びとの庶民の生活に根付いた昔ながらの魚の皮が、スナックとして世界中に発信され、やがてお洒落な飲み屋のツマミとして登場するようになった。後少ししたら、また違った形で炸魚皮を楽しめる日が来るかもしれない。
香港、アジア圏ならではのこんなメニューを見つけた際は、ぜひ一度試して頂きたいと思う。(文/写真 香港コーディネーター 矢島園子)
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