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2020.08.17
香港の街から消えゆく看板

多くの人にとって香港のイメージと言えば「高層ビル」や「100万ドルの夜景」、そして競うように道に突きだした「看板やネオン」ではないだろうか。

街を埋め尽くすように覆いかぶさった看板とそれらが入り混じったごちゃごちゃとした街並みは、多くの映画やテレビ・写真などを通して世界の人に知られ、やがて香港名物となった。

香港の観光ツアーで一番人気のものは、昔も今もこの看板の下すれすれに走り抜けるオープントップバス・ツアーである。

 

ところがその看板が香港から消え始めている。

安全性の理由から、基準にあわない看板の撤去が始まったのである。

また規制違反による撤去とは別に、昨年以来の長期的な経済低調も大きく影響をしている。

多くの店舗が閉店や縮小を余儀なくされ、そして閉店した店舗の看板も失われ始めている。

 

この看板に関する規定は、とても細かく決められているという。

看板を支える鉄筋の長さ(建物からの長さ)の制限、看板と看板の距離の制限、などである。そして安全性の理由からメンテナンスは必須であり、政府の担当部署による定期的なチェックが行われる。そのチェック項目を満たさないものが撤去対象となっているのである。

 

確かに台風が多い香港、そして多くの居住者がいて常に街が混雑をしている香港では、

看板落下などの事故を防ぐために安全面の配慮が大切だ。

だが香港の特徴とも言える大きな看板が次々と撤去されるのはとても寂しく、またそれによって街の様子も随分と変わってしまった。

 

先日、この撤去された看板や看板に記された文字に特化をした、小さな展示が行われた。

既に終了してしまったが、その様子を写真でお伝えしたい。

 

この展示会は6月に行われた「重遇.重創(RECONNECT RECREAT)」というもの。

撤去された看板やネオン、看板に書かれている伝統的なカリグラフィーの展示である。

古き良き香港の保存と、未来に向けた新しい形を問うものだ。

 

香港ネオン看板

撤去された看板やネオンが並べられた展示室

 

ちなみに最近の香港の傾向として、昔のオールド香港を大切にしようとする動きが盛んである。

この数年人気があるレストランの内装は、香港らしいネオン看板や街並み、街市(マーケット)の赤いランプ傘や昔ながらの蛇腹シャッター等の内装が施されているものが多い。

そしてそれらの古い香港らしさを全面に出した場所が、新たな撮影スポットとして外国人だけではなく香港の若者にもウケているのである。

 

今回の展示もネットを中心に情報が行き渡り、多くの若者を中心に連日大盛況であった。

筆者もこの展示に数回訪れたが、いつ訪ねてもたくさんの来場者がいた事に驚いた。

 

こちらの写真に映っている大きな鶏は、廟街にあった麻雀店のもの。特徴的なネオンが廟街という独特な雰囲気にあっていたので取り外しが行われて残念であった。

その下の「押」という字はなんだかお分かりになるだろうか。

 

香港ネオン看板

 

 

この「押」という文字が書かれた看板は香港やマカオでよく見かけるもの。これは質屋の看板を記すものだ。広東語で「押」という字には「質に入れる」という意味がある。

 

香港ネオン看板

質屋の看板は、上の写真の右のような形をしているものが多い

 

押の字の上の形は、「福」や縁起物の象徴であるコウモリの形をしている。押の文字の周りの円形はお金で商売繁盛を意味しているとか。

香港、マカオの街を歩くと実のこの押の看板が多いので、ぜひ街歩きの際はキョロキョロとしていただきたい。

 

他にもこんな展示があった。

 

香港ネオン看板

ずらりと並んだ看板や伝統的なカリグラフィー、手書きならではの文字の美しさがある

 

香港ネオン看板

蛇スープの専門店のネオンやカリグラフィー

 

特に香港の冬になくてはならない、蛇のスープ。

 

これらの写真で、一言に看板やネオンといってもそれぞれの幅広いスタイルがあるのがお分かり頂けたのではないだろうか。

 

少しずつ確実に消え行く香港名物のせり出した看板や派手なネオン。しかしまだその光景が全て失われたわけではない。

“香港らしい”看板や手書き文字の看板に出会いたい方は、まだ少しでもその姿が残る”今”が残り少ないチャンスなのかもしれない。 

(文/写真 香港コーディネーター 矢島園子)

 

 

 

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