世界的に異常気象が顕著になっている近年だが、今年も日本や香港を襲った台風や暴雨の様子は記憶に新しい。今年の台風では日本の鉄道各社の計画的運休が話題になったが、香港では更に徹底した対応が行われているのでご紹介したい。
当地香港では昔から台風の被害が多い。その為、台風に強い都市作りの一環として政府による気象ガイドラインが設けられている。日本のように鉄道各社がそれぞれに検討をしてまちまちの対応をするのではなく、政府がガイドラインとして定めているので、台風時の対応が非常に明快なのである。
こちらは香港天文台(日本の気象庁にあたる機関)のアプリから抜粋した台風シグナルの一覧である。
数字やマークで分かりやすい
台風は上記のシグナルによって表されており、それぞれのシグナルごとに行うべき対応が決まっている。
まずシグナル1の場合は『T1』と表記され、『スタンバイ』を意味する。これは香港の800km圏内に台風が接近中なので、今後のルートに注意しなさいという意味になる。
シグナル3は『T3』と表記される。シグナル3は『強風警報』を意味し、このシグナルが出ると幼稚園は自動的に閉園となり、また各地へのフェリー欠航も有り得る。
次にシグナル8『T8』は『暴風警報』となる。香港では年に数回、このT8が発令される。このシグナルはそれぞれの風の向きを表すマークと共に表示され、T8が発令されると学校・商店・オフィス・テーマパーク・証券所などは基本的に閉鎖される。交通機関は順次運休となる。
シグナル8以上が発令されることは、この香港でも滅多にない事である。
シグナル9『T9』は台風が香港に直撃をするという意味で、この時点で地上を走る交通機関はほぼ無くなる。
現状で最大シグナルは『T10』でハリケーン警報となる。今年の9月16日、超大型台風「山竹」が香港を襲い、2年連続でT10が発令されている。10数年香港に住んでいる筆者も、T10を経験したのは数える程しかない。
「山竹」ではかなり多くの木が倒れ、窓ガラスが割れたり浸水するという莫大な被害があったにも関わらず、けが人は多数いるが死亡者は無しという発表であった。この台風に備え、政府は漁村の村人を非難させたり市民への警報を何度も出しており、事前の警報や準備の所以ではないかといわれている。
こちらは、台風シグナルが10から8に下がり、更に3になった時点で記録をした筆者のスマートフォンの画像である。
子供やお年寄り、外国人にとっても一目瞭然
このように、天文台のアプリを開くと分かりやすいマークが並んでおり、一目で現状が理解できて、自分がどう動くべきか判断ができる。また、天文台からはプッシュ通知で何度も「事前」にシグナル情報が流れて来る。
「事前」にというのは、つまり、T3からT8へ、急にシグナルが変わることはなく、事前に予告があるのである。 「今日の午後何時頃、シグナル8になる予定」とか「明日の朝には状況を見ながらシグナルを下げる」という情報が、携帯やテレビ画面を通してきちんと事前予告として伝えられるのである。
シグナル8になれば基本的にオフィスも閉鎖となるが、出勤や退勤する人の動きを考慮して事前予告がきちんとされ、結果的に計画的に動くことができる。
会社でよくある光景としては、「○時頃にシグナルが上がるので、仕事が落ち着いた人から順次退勤をしなさい」という会社判断によるアナウンスである。これは一斉に人が動くことで混乱をしないように、また社員の移動中の安全を考えたものであり、殆どのオフィスではこのようにシグナルの予報を考慮しながら個々に対応がされている。
ちなみに、香港では雨量によってシグナルが分かれる暴雨警報も設定されており、シグナルごとに「外出を控える」「幼稚園閉園」などのガイドラインも設定されている。
香港という土地柄、気象被害が多い場所であるが故に構築されたガイドラインであるが、今後世界的に気象異常が出てくる中でそれぞれの良いところを相互に取り入れていく事も必要になるのではないか。
予断となるが、香港人は台風が来るとそわそわする。また、にわか気象予報士であるかのように、台風の進路を予想する人も多く出てくる。シグナル8になると会社も休みとなるため、勤め人の多くはT8という堂々と休める状況が嬉しいようである。
シグナル8の間は外出できないので家にいるしかないのだが、日頃忙しくしている香港人が身体を休めたり 家族で麻雀などをして過ごす良い時間なのかもしれない。(文/写真 香港コーディネーター 矢島園子)
株式会社フライメディアは、映像制作を中心に、海外、主に中国、台湾、香港のリサーチ、コーディネーションサービスをご提供している会社です。
本日御紹介した「香港台風警報」関連についてもっと知りたい方、写真の使用をご希望の方は、是非お問い合わせください。