この数年間、香港では昔ながらの古き良き香港の面影を残す老舗の閉店が続いている。
コロナ以前から香港では家賃高騰が続き、世界でもっとも賃料が高い地域と言われ続けてきた。
そして2019年に発生した抗議活動、その後コロナによる3年近い渡航制限により、苦難が何重にも重くのしかかっている。その為この数年で急速な閉店や事業縮小が相次ぎ、多くの老舗名店やレストランだけではなく、小売チェーン店、フィットネスセンターや映画館までもがその歴史に幕を閉じたり香港から撤退をしているのである。
この数年、地元メディアでは閉店を意味する「結業」の文字が幾度となく飛び交ってきた。
ここ最近ではあまりに結業が多いためか、「最近結業した店舗一覧」なる特集が半期ごとにくまれ目にする程である。
今日は日本人にもよく知られる、最近結業をした老舗カフェをご紹介したい。
それは「美都餐室」(MIDO CAFE)。油麻地という下町に位置し、冰室と呼ばれる古い香港式のローカルカフェ(食堂)である。地元情報を見ると72年も続く古く歴史ある店であったとのことだ。
古い昔ながらのタイルが貼られたノスタルジックな雰囲気の店内は幾度となく映画やドラマの撮影に使われてきた。
日本の雑誌やガイドブックにも常連の店であり、香港を何度か訪れた観光客はその名を聞いたことがあるのではないだろうか。最近は料理の質と値段がマッチしていない等と地元民の間で話題にはなる事もあったが、それでもあの店の独特な雰囲気をあの料理の値段で買う価値はあったのではないかと想われる。
2017年当時の「美都餐室」外観
そんな歴史ある「美都餐室」であるが、シャッターを下ろしたのは今回だけではない。
実はコロナの渡航制限や飲食制限が発令された際、一度長期的に店をクローズをした時期もあった。ちょうど飲食店の入店人数制限や、入店時間制限が発動されていた時期の事であった。ただその際は暫くして規制が解けると同時に店も再開したのだが、今回の閉店は永遠に店を閉めたのか一時的なものかは定かではない。
今回は何の前触れもなく店のシャッターがある日突然おろされたという。現在は店の前に各国の言葉で「さよなら」を意味する単語が書かれた張り紙が出されているという。しかし同時に張り紙内には「縁があればまた会いましょう」という意味の言葉がかかれている上、オーナーからの正式な閉店案内が出れていないために、再度オープンする可能性も否定はできなくはない。
香港の下町で長く耐え凌いできた老舗カフェが再び地元民や観光客の憩いの場となる日は来るのであろうか。
2019年当時の「美都餐室」
夜に露店が並ぶ事で知られる男人街に面しており、コロナ前までは観光客と露店で夜遅くまで賑わう場所であった。
今回は「美都餐室」についてご案内をしたが、結業はこの「美都餐室」だけではない。古きよき香港の時代を感じさせる名店が続々とその暖簾を下ろしている。いずれも香港という場所で昔から営業を続けて地元民に愛された店ばかりだ。
観光業が回復するまでまだ先の見通しが立たない状況であるが、少しでもこの苦難の時期を耐え忍び、再び香港を代表する店として営業される事を祈るばかりである。
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