昔は漁業が盛んであった香港。その為香港内には海や漁師の守り神と言われる天后を祭る廟が各地に数多く存在している。
そして香港の人々が昔から大切にしている年中行事の一つが旧暦の3月23日の天后誕である。海の女神である天后の誕生日となるこの日、天后廟には多くの地元の船員や住民が訪れる。そして感謝の祈りを捧げ、地域をあげて盛大な祝賀イベントを開催するのである。
ただこの祝いのイベントもコロナ蔓延中の数年間は残念ながら中止されてきた。そして今年の天后誕となる5月12日、待ち望んだイベントが各地で盛大に再開されたのである。
今日ご紹介する天后誕の様子は九龍の下町として知られる油麻地天后誕の様子。今では市内中心部にある油麻地天后廟であるが、元はこの辺りでも漁業が盛んであったのであろうか。
この日、廟へ入る入口には写真のようなカラフルで巨大な祝いの飾りが設置されていた。暗くなるとカラフルにライトアップされる飾りはゴージャスそのもの。普段は夜になると真っ暗になる廟の前のエリアとはうって変わった様子である。
そして天后誕の当日は、朝から夜まで多くの儀式やイベントが行われ、平日であるにも関わらず大勢の人々が訪れた。写真は廟の中で行われた儀式の中で行われたライオンダンス。広いとは言えない廟の内部、頭上には渦巻き線香やライトが下がる中で行われるライオンダンスは、普段は見られない貴重なシーンと言える。
廟の入口には花炮が飾られていた。これは紙や竹で造らた大きな飾りで、天后誕には欠かせないものであるそうだ。
廟内での儀式が一通り終わった後は、広場で市民に向けたイベントが行われていた。広場の一画には舞台が設置され、さまざまなパフォーマンスが行われていた。こちらは広東オペラの上演の様子。他にも中国武道や中国風の雑技、歌手のパフォーマンスもあり昔の人々は年中行事の度にこういった舞台を楽しんでいたのが想像できる内容である。
また舞台の回りには多くの屋台が並んでおり、訪れた人を楽しませていた。こちらは草で造られた昔ながらの手作りのバッタの屋台。
草や竹を織り畳みながら作り上げた昆虫はまさに昔ながらの民間工芸。一つひとつ、すべて手作りされている為入手するためには30分程並ばなくてはならなかったが、暗くなるまで人が絶える事はなかった。
他に溶かしたキャンディで字や動物を象る糖画の屋台、扇子に美しい文字を記載する屋台等多くの伝統的な屋台がありいずれも大盛況。
そして中央広場では祝い事には欠かせないライオンダンスのパフォーマンスも行われた。高いポールの上で踊るライオンは大迫力で、多くの観客を魅了。
朝から夕方まで、多くのパフォーマンスの上演や屋台での手作りの品が振舞われたこの日。勿論油麻地以外でも、他多くの地域で久しぶりの大掛かりなイベントが行われたようである。まさに老若男女問わず、多くの市民が久しぶりに訪れた祝いの日を一緒分かち合った一日であった。
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