「QR大国」として知られる中国、これまでもキャッシュレス化や無人化サービスは広く普及していたが、コロナ禍で「非接触」というキーワードが一層注目を集め、日常生活においても「QRコード」がさらに“深く”浸透し、生活に欠かせないものになっている。
どこに行っても「QRコード」!
とくに都市部では、QRコードを使ったモバイル決済が日常となり、財布を持たずに出かける人が増えている、という話題も日本のメディアを通じて紹介されていると思うが、これは大げさではなく、スマートフォンさえあれば、何でもできてしまう現地では、すでに「財布」という存在すら影薄くなっている。
キャッシュレスの「モバイル決済」社会へ
このモバイル決済が中国全土にわたり急速に普及しているなか、“ある”QRコードの出現がビジネススタイルやサービスを大きく変えている。
現地で街歩きをしていると、気づくのが小さな露店にも用意されているQRコードだ。初めて上海を訪れた人は、そのQRコードの多さに驚く。さらによく見ると、現地で見かけるQRコードは、見慣れた四角のものだけではなく、丸いQRコードもある。
上海・ファストフードのミニプログラム「QRコード」
この丸いQRコードこそが今回紹介する、ビジネスやサービスのスタイルを大きく変えた“立役者”!?ミニプログラム用のQRコードだ。
ちなみにミニプログラムとは、中国版LINEとも呼ばれている、メッセンジャーアプリ「Wechat (ウィーチャット)」の機能の一つ。中国語で「小程序(シャオチェンシュ)という。
ミニプログラムは、ウィーチャット上で使用するアプリのことで、通常のアプリと違い、ストアなどから改めてダウンロードやインストールをしなくても良い、言わばアプリの中にあるアプリ。使いたいと思ったときにすぐに立ち上げて使える便利な機能だ。
上海・便利なミニプログラムのスキャンが主流に!
このミニプログラムは2017年1月に発表されているが、2020年のユーザー数は8.5億人を突破するとも言われている。このミニプログラムの登場で、ビジネスやサービスのスタイルが変わり、消費者の購買スタイルも様々な影響を受けている。
例えば、ミニプログラムを使うと、企業PRはもとより、会員カード、優待券、割引券、クーポン、そしてキャンペーン情報などを手軽に発信することができる。さらには、EC機能もあるので、商品販売すら可能になる。もちろん、顧客データの収集及び分析もラクラクできる。
某飲食店の会員募集で活用されるミニプログラム
中でも、最も注目されているのが、驚異の拡散効果。消費力や影響力をもつ若者の心をつかむ仕組みが多く、ツールを身近に感じさせることで、アクセス率を高めている。この拡散力を利用し、現地では、多くの企業が上手にこの機能を取り入れて活用している。
絶大な消費力を担うと言われる90年代生まれの若者からしても、すでに生活にとけこんでいるミニプログラムを使うことは自然で、飲食やショッピングなどでモバイルを使わない生活スタイルは考えられないといっても過言ではない。
そのため、中国の大きな消費市場を引きつけるためには、こうした中国の新たな習慣を理解し、果敢に取り入れていくことが必要になる。
2014年、北京にて、和座互動(北京)伝媒科技有限公司を立ち上げた若手実業家の薛亮さん(36才)は、ウィーチャットの企業公式サイトやミニプログラムの設計、開発、運営といったワンストップサービスを提供し、国内外企業の中国市場におけるブランディングのサポートをしている。
北京・「798芸術区」にある薛さんのオフィス
これまでも大型ショッピングモールや中国国内の航空会社のミニプログラムを開発、マーケティングや運営などに携わり、市場に敏感なアンテナをもつことから、顧客からも高い評価を得ている。
薛さんは、「日本でも、もっとミニプログラムのすごさを知ってもらい、どんどん活用してほしい」と、日本では、まだミニプログラムを活用していないことを残念に思っていると話す。
薛さんも日本に観光に行くことが大好きで、これまで何度も訪れているが、アプリによる現地での情報の取りにくさや機能の少なさに首をかしげる。日本にはすばらしい景色や文化がまだまだたくさんあるが、外国人がこうした情報を得るのはハードルが高いと言う。
もちろん、中国人観光客をはじめ、多くは口コミや旅行社サイトなどにもアクセスし情報を入手するが、現地から発信するルートをもっと広げれば、ビジネスチャンスも多様化する。
北京•北京屈指のアートエリア「798芸術区」、スタートアップ企業も集まる
とくにインバウンドの要とも言える中国人観光客は、普段より、現場でQRコードをスキャンし、情報をチェックすることに慣れているので、「ミニプログラムを活用したPRや商品販売などは、とくに地方の観光地の振興に最適で、低コストで大きな効果につながる」と熱く語る。
普段、現金に触れない生活をしているので、海外での換金額の計算、おつりの整理などは面倒で、モバイル決済ができるだけでも購買意欲がより高まる。
さらに言うと、こうした中国の観光客や消費者へのマーケティングやミニプログラムを導入する必要性に気づいたとき、どうしても在日企業や日系企業に業務を依頼しがちだが、そこでも「中国市場や消費者の嗜好の変化のスピードがはやいので、やはり現地の企業のほうが市場とのギャップも少なく、急速な変化にも敏感で、タイムリーに対応できる」と薛さんは分析する。
とくに、言葉の問題さえクリアすれば、現地のベンチャー企業は、柔軟な考えに加えて、フットワークが軽いので、時短、低コストでサービス提供が可能だと紹介する。日系企業にはないスピード感は中国系企業の強みだと言う。
日本でも、アフターコロナで、中国からの「リベンジ旅行」や「リベンジ消費」といったインバウンド経済効果に期待が寄せられるが、近い将来の需要の前にしたとき、このような“ミニプログラム”をはじめ、モバイルを最大限に活用するシステムの導入を考えることもおすすめだ。
和座互動(北京)伝媒科技有限公司:北京市朝陽区酒仙橋路798芸術区797
株式会社フライメディアは、映像制作を中心に、海外、主に中国、台湾、香港のリサーチ、コーディネーションサービス、ライブ配信サービスをご提供している会社です。
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