コロナの話題以外に3月中に香港市民を悲しませたニュースの一つが、スターフェリーの経営問題だ。
スターフェリーと言えば香港観光客の利用のみならず地元の人からも100年以上にも渡って愛されてきた、まさに生活に密着した便利で安く、風情のある乗り物だ。
香港に来た事がなくとも、スターフェリーの名前や姿を見聞きしたことがある人も多いのではないだろうか。
スターフェリーの起源は1888年。当時「カオルーン・フェリー・カンパニー」によって香港島と九龍半島を結ぶ交通手段として運行が開始されたが、アヘン戦争後の1898年に「スターフェリー」社によって運営が引き継がれた。
現在は尖沙咀-中環間、尖沙咀-湾仔間の2ルートでフェリーを運航するほか、ビクトリアハーバーを遊覧するウォーターツアーを催行している。
深い緑色と柔らかなアイボリー色に彩られた船体が、朝昼夜とビクトリアハーバーを行き交うようす、また、たった数分の乗船時間とはいえ長年変わらぬ形態で運行されているフェリーはこの上ない魅力がある。
フェリーに揺られながら見渡す香港の海岸景色、エンジンの匂いや音、フェリー会社の良い年にさしかかったおじさん達が切る濃紺のセーラー服等は、香港ならではの象徴的ものとして乗った人々の記憶に刻みこまれてきた。
しかしそのスターフェリ―が現在経営危機に面しているというニュースが出たのが2022年3月中旬の事である。今までもその経営の難しさについては幾度か語られてきているが、コロナ禍で社会全体が苦しむ香港での今回報道は人々の心の中に大きな悲しみを落としたのではないだろうか。
現地のいくつかの情報減によると、香港情勢が悪化した2019年6月以後この30か月間でスターフェリー会社の累積赤字が7,000万香港ドル(約10.5億円)に上っているとの事だ。2022年の2か月間の乗客数は合計100万人程度、これは2019年の同時期のたった27%に過ぎない数であるらしい。既に債務超過状態である中で、香港の長期化するコロナの状況が拍車をかけているようである。
この報道を受け、多くの人々が驚き悲しむと共に、歴史的価値や文化があり香港の象徴ともいえるスターフェリーをなんとか救えないものかと考え始めたと感じている。
個人レベルでも、久しぶりにフェリーに乗って少しでも足しになれば、と通勤をバスからフェリーに変えた人もいる。このような発信をSNS上で行っている人を幾名か見かけた。
香港はコロナの約1年間より情勢の悪影響を受けている。そこから数えるとすでにすでに3年程の長い年月が経ち、この間多くの観光・レストラン・サービス業等に計り知れないダメージを与えてきた。多くの馴染みのある店、レストラン、組織が消えてしまったのだが、歴史と文化と香港人の精神を背負った旅情気分溢れるスターフェリーはなんとか存続してほしいと強く願っている。
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