かつてイギリス領であったころから続いている伝統で、正午になると発砲される一台の大砲がある。それが「ヌーンデイ・ガン(Noon Day Gun)」と呼ばれるものだ。香港島一の繁華街である銅鑼湾(コーズウェイベイ)のタイフーンシェルター前に位置するその大砲は、毎日欠かす事なく正午になると1発の砲を鳴らす。
元は香港島の東エリアに位置していたとうこの大砲は、1860年代に現在の位置に移転されたという。この大砲が毎日欠かさず正午に鳴るという理由には諸説あるようだが、ウィキベテアにはこのように書かれている。
「その伝統は、東角に主要な倉庫と事務所を置いていたジャーディン・マセソンが、航海によって到着した大物を歓迎するための礼砲を私設軍に撃たせていた、1860年代のある事件に起源を持つと考えられる。イギリス海軍そのような礼は、政府高官と軍の上級将校のためのみに保留されるべきだと考えた。贖罪としてジャーディン・マセソンは、時報の役を果たすため、それ以来、正午に大砲を撃つことを要求された。(ウィキペディア日本語版より抜粋)」
ジャーディン・マセソンとは香港に本社を置く、イギリス系の非常に大きなグループ商社である。理由はどうであれ1860年代より今まで、この大企業により大砲が維持されているというのは兎にも角にも、凄い事ではないかと思えるのだ。
この大砲を見るための最も知られているルートは、目の前のワールドトレードセンター或いは今はなくエクセルシオールホテルの地下から海側へ抜ける方法である。この地下道はほとんど通り抜ける人もいない通路であるが、所々に大砲への道しるべが掲げられている。
ワールドトレードセンターからの地通路
所々にある看板がなければ、本当にこの道でよいのか迷うところである
こちらが大砲である。目の前のハーバーはタイフーンシェルターになっており、多くのヨットが停泊をしている場所である。
香港に住んでいれば誰でも知る大砲であるが、実際にここへ見に来た人はそれほど多くないのではなかろうか。そもそも昼時12時にこの場所にいる事自体があまりある事とは思えないような場所である。
筆者が訪れたのは正午15分ほど前。
パラパラと観光らしき人が集まってきており、柵の外からその瞬間を待っている。
正午近くになると1人のスタッフがやってきて時間になると鐘を2回鳴らした後、大砲を1発撃った。
その衝撃や音は相当なもので、初めて見る人は驚くのではないだろうか。たった1発の大砲、しかし見ごたえ聞きごたえが十分である。
こちらの写真は大砲の真後ろから見た景色。このように現在はヨットハーバーになっている真正面に向かって1発の大砲を売っている。
因みにこちらの大砲は、第一次世界大戦で実戦に使用されていたものであるようだ。
この案内板によると本来は大砲を発射した後30分の入場が可能であるとの事。しかしコロナの影響からか、今回は入場時間は取られておらず、打ち終わるとそのまま終了となっていた。
小雨の降る日であったため、大砲を発射した後はブルーのシートがかけられていた。
古き良き伝統をひっそり、しかししっかりと守り続けているヌーンデン・ガン。香港に残るイギリス植民地時代の名残の一つと言えるのではないだろうか。
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