2018年10月30日、鳳凰網やその他香港メディアの報道によると、武侠(ぶきょう)小説の大家である金庸(きんよう)さんが、香港の病院にて亡くなった。94歳だった。
武侠小説の大家・金庸さん(出典:鳳凰網)
10月30日の晩、SNSでは「金庸逝去」のニュースが流れ、金庸さんの作品や数々の名言などが次々とUPされ、悲しみの声が広がった。
金庸さんの作品は、多くが映画化され、近年では、「倚天屠龍記(いてんとりゅうき)」や「射雕英雄伝(しゃちょうえいゆうでん)」など、主な作品はすべて日本語に翻訳されているので、耳にしたことがある人もいると思うが、日本では依然として中華圏ほど知名度は高くない。
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金庸さんは、世界の中華圏では絶大な人気を誇り、「華人のいるところ、金庸の小説あり」と、中華圏で「金庸」を知らない人はいないとまで言われるほどの有名人なのだ。
「金庸」という名前はペンネームで、古龍(こりゅう)と梁羽生(りょううせい)二人の作家とともに、「新派武侠小説」の御三家と呼ばれている。
SNSに一番多くあげられた言葉(出典:鳳凰財経網)
日本ではあまり聞き慣れない「武侠」というのは、武術にたけ、義(正義)をつらぬこうとする精神をもち、またその行動を重んじる人物を描いた小説の総称。
金庸さんは、歴史的要素の中に超人的な技、個性的で魅力あふれる登場人物、複雑な人間関係などをもりこんだ壮大かつロマンあふれるストーリーを描き、老若男女を問わずとりこにし、圧倒的な支持を集めた。
人気も高く、代表的な作品
その作品は「金庸ワールド」とよばれ、武侠小説というジャンルにおいて、独自の世界観を確立したといっても過言ではない。
こうした独特の世界観をつくる彼の作品には、「奥義」や「秘伝書」という欠かせないスパイスがあり、これもまた作品をひきたてる魅力の一つになっている。
これらは、「内功(ないこう)」を修行して、その超人的な技や力を身につけるのだが、それがまた物語の進行に大きく影響を与えている。この「内功」とは、体内の気をめぐらせて使うものだが、攻撃や防御のほか、怪我の治療などにもその力を発揮する。また秘剣や名刀などにまつわる由来もおもしろい。
複雑な人間関係の分析や背景となったゆかりの地に関する本
こうした魅力的な作品は、熱烈的なファンをつくり、その登場人物の生き様を分析する、物語の背景となった場所をたどるなど、金庸さんの作品を研究する「金学」という学問までうまれている。
ちなみに武侠小説で度々出てくる「江湖」とは日本語で、世間一般を指す言葉なのだが、武侠小説では、特定の世界ともいえるし、登場人物が活動する架空の空間などともいえ、かなり曖昧な概念で、さまざまな解釈がある。
多くの人に愛された金庸さんの“江湖”
SNSでは「江湖永別!(さらば江湖)」「先生已走 再無江湖(金庸さんなくして、江湖なし)」という言葉も多く、武侠小説界において、一つの時代の終わりを告げた。
心より金庸さんのご冥福をお祈り致します。
参考:http://finance.ifeng.com/a/20181030/16550647_0.shtml
http://ent.ifeng.com/a/20181030/43130216_0.shtml
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