データからありとあらゆる3次元の形を再現して様々な模型を「印刷」できる3Dプリンター。その利用価値、応用分野はますます広がっているが、バイオ分野も3Dプリント技術が大きな力を発揮することが期待されている分野の一つだ。
中国科学院遺伝・発育学生物研究所の王秀傑研究員によるグループと、英マンチェスター大学の王昌凌教授によるグループ、そして清華大学の劉永進教授によるグループの共同研究で、6軸ロボットをバイオ3Dプリンターに改造し、「印刷」した心筋組織を体外で6か月生存させることに成功した。
■既存のバイオ3D技術に存在する大きな問題とは?
バイオ3Dプリント技術は3Dプリンターを通じ、細胞とバイオ材料を含む生物インクを特定の形状、構造に形成させる技術で、ヒトの器官の体外製造を実現する可能性が高いとされる新興技術の一つだ。ただ、現状のバイオ3Dプリント技術は水平または垂直に少しずつ層を重ねていく方式のため、プリント後の細胞が栄養供給不足に陥り、すぐに死んでしまうという大きな問題を抱えている。また、バイオインクを急速に固定、成形するための成分も細胞の生存や機能に影響を及ぼすこともネックだ。
これらの問題を解決すべく共同研究チームが開発したのが6軸ロボットのバイオプリンターだ。360度自由に回転する6つの関節を持つことで、理論上は空間のあらゆる角度で細胞の「印刷」を行うことができる。また、鉱物油に油浴させた細胞をインクとして用いることにより、より安定的に足場材料の表面に細胞を付着させ、足場材料や周辺細胞と密接につながることが可能になったという。
6軸ロボットと油浴細胞プリントという2つの新開発技術により、複雑な血管の足場上に全方位から細胞のプリントを実現、手作業による細胞播種と同じ98%を超える生存率とともに、正常な細胞周期、生理機能を保つことに成功した。血管の足場に細胞をいくつかプリントし、一定時間培養して細胞間の機能的な連結、そして新たな毛細血管の形成を誘発し、再び細胞のプリントを行うという「プリント―培養―プリント……」という工程により、プリントした組織の内部に体内器官と同じような血管網を構築し、器官を長生きさせることができるのだ。
チームはこれらの技術と工程を用いて、血管内皮細胞と心筋細胞のプリント実験を実施。その結果、複雑な血管の足場上に完全な内皮層を形成して新たな毛細血管が発生、心筋細胞も短期間のうちにギャップ結合が生じ、規律的な脈動が回復してなおかつ長時間維持し、心筋組織を体外で6カ月間以上生存させることに成功した。この成果により、バイオ3Dプリント技術は大きなブレイクスルーを達成し、より複雑な組織器官の体外製造の実現に向けてさらに一歩前進することになった。
今の世の中、技術の急速な進歩に驚かされることだらけである。今回の研究成果も、やがて医療分野に大きな革命を起こすことになるかもしれない。
(出典:https://news.sciencenet.cn/htmlnews/2022/3/476225.shtm)
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