この1週間の間、香港は2度の台風警報が発令された。以前も少し触れたのだが、今回は香港の台風システムについてご案内をしたい。
もともであると台風の影響を受けやすい香港は、台風が近づくと天文台による警報が発令される。天文台とは日本でいえば気象庁にあたる機関である。
そしてこの天文台により発令された警報シグナル度数により、市民・学校・職場などはそれぞれの行動をする。
気象に関するシグナルはいくつかあるが、台風に関する警報はシグナル1,3,8,9,10の5種類だ。それぞれの意味は下記となる。
◆台風シグナル◆
1)シグナル1 「警戒準備」: 台風が香港から800キロ範囲に接近。通常この時点で風雨などの影響はほとんどがないことが多いのだが、今後の進路に気をつけるように促すためのシグナル。
2)シグナル3 「強風」:台風が香港にどんどん近づき、勢いがある状態。幼稚園などは休みとなる。また場合によっては近隣へのフェリーが欠航となることもある。
今後の台風の進路によって台風が更に香港へ近づく場合、台風に備える準備をする。
3)シグナル8 「暴風・暴風雨」:学校や会社、多くの商店、金融市場は停止となる。交通機関が止まる。
ちなみにシグナル9,10は台風が勢力を増したり香港を直撃したりする最大強度の警報だ。
シグナル8以上が出る場合、学校は休校となり、企業も香港の労働省によるガイドラインを参考に動き、多くの企業においては自宅待機となる事が多い。また、数時間から一日程度の間自宅から出られなくなる事が予想されるため、事前にスーパーなどで買いだめをする人が増えたり、窓ガラスの補強などに追われることとなる。
先週はたった数日程度の間に2回のシグナル8警報が出た香港。今回は2回目に出た警報について、時間を追ってご案内をしてみたい。
下記の写真は香港天文台のスマートフォン用のアプリ画面をキャプチャーしたもの。多くの在住者はこの便利な天文台のアプリをダウンロードして参考にしていることが多い。
10月12日(火)の午前8時47分、この時点で台風コンパスの影響を受けシグナル警報3が発令されている。また天文台からのアナウンスではシグナル3は、同日の午前から午後早い段階までは維持されるとのこと。
ちなみにシグナル1以上が出る場合、各建物や商業施設の入口などにはこのようにその時点でのシグナル警報を示したサインボードがおかれる。ニュースを見ることができずにずっと屋外にいても、容易に状況がわかるようになっているのだ。
12日午後12時39分時点の状況。シグナル3を維持しているが、午後4-6時の間にシグナルが8に上がる予告がされる。
天文台が案内を出すごとに、多くのニュースツールでも速報が流れる。ちなみにこちらはラインニュースをキャプチャーしたもの。
シグナルが上がるであろう時刻が予告されると、いよいよ台風がかなり接近しているという事だ。仕事をしている人々は所属企業から帰宅令が出ることを予想して仕事のスケジュール調整をしたり、家にいる人々は窓ガラスの補強や食料の買い出しを行う。
そして15時35分の時点で、17時20分までにはシグナル8が発令されることが発表される。いよいよ時間が決定されると、筆者の働く企業では発令時間の2時間前頃には営業が終了し、自宅へ帰宅をするように促される。(企業により対応はまちまちだが、目安として2時間程度を前に終了、という企業が多いように見受けられる)。
台風の数時間前となると帰宅のためのバスや電車を待つ多くの市民の行列ができるのも台風前の恒例の光景だ。
帰宅途中通りすぎる多くの建物はこのようにガラスの補強が終わっている状態だった。
海風を強く受ける香港では、台風の風による被害も多く出ることから、台風前はガムテープが売り切れとなるのも恒例の状況だ。
そして17時20分頃シグナルが8となった。町からは人がいなくなり静まり返り、営業をしている商店はほとんどなくなる。交通機関もバスやフェリーはほとんど停止となり、MTRの運行もかなり間引きされたものとなる。
翌10月13(水)の朝8時10分時点で台風シグナルは8を維持。学校、多くの企業は休み(あるいは自宅待機)となる。
13日(水)午前10時15分時点で、このシグナル8は少なくとも午後16時まで続くとのことがアナウンスされる。筆者の会社は14時の時点でシグナル8が続く場合、そのまま自宅待機という規定になっている。
昔は台風ともなると完全休業となり大喜びする社員が多かった。筆者の周りの香港人は台風シグナル8は麻雀休暇と呼んでいたほどだ。(家族が家にいてやることは麻雀しかないとのこと)
しかし最近はコロナの影響でホームワークの習慣が増えてきているため、台風のため帰宅を促された場合は自宅で働くという人も増えてきているようだ。これもコロナによる変わったことの一つであろう。
いずれにしてもきちんとしたシグナルと、シグナルによる行動パターンがある程度定められているため、非常にシステマティック。また数時間前に予告をするというスタイルが徹底している香港の台風警報は見習うべきポイントが多いのではないだろうか。
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