■塩湖でのリチウム抽出に関する新技術
電気自動車をはじめとする様々な動力のバッテリー材料として欠かせない存在となっているリチウム。中国や南米にある塩湖がリチウムの主要な採集地になっているが、中国の研究チームはこのほど、太陽光エネルギーを利用した塩湖でのリチウム抽出の新技術を開発した。
南京大学の朱嘉教授、中国科学院の陳駿氏らによる研究チームは、塩生植物の蒸散プロセスをシミュレートすることにより塩湖のアルカリ水から効率的かつ環境に優しい形で高純度のリチウム塩を抽出することに成功。その成果が9月27日、国際的な学術誌「サイエンス」で発表された。
■塩生植物の蒸散システムから着想
論文の筆頭著者である南京大学の宋琰・特任副研究員は、電気自動車用バッテリーなどに用いられるリチウムは主に塩湖のアルカリ水と、固体鉱石という2つの形で存在していると紹介。中国の高原地域にはリチウム資源が豊富な塩湖が数多く存在するものの、湖水の「マグネシウム・リチウム比」が非常に偏っている上、マグネシウムとリチウムの分離が難しく、リチウム塩の生産コストが高い、品質が低いという問題点を抱えているとした。また、高原地域はデリケートな生態環境を持つため、環境保護に対する要件が厳しく、なかなか産業の発展が進まない状況にあると説明した。
そんな中で、研究チームはアルカリ性土壌で育つ塩生植物が蒸散作用によって塩分と水分を選択的に吸収していることに着目。このシステムを模倣することにより、「界面光熱による塩湖リチウム抽出装置」の開発に成功した。この装置は3層に分かれており、太陽光が照射すると蒸発層のナノチャネル内で超高圧が生じる。この圧力がイオン分離層に伝わり、アルカリ水中のリチウムイオンを選択的に貯留層へと「駆逐」する。そして水循環システムを通じて貯留層中のリチウム塩を収集するという仕組みだ。
■太陽光だけで稼働、エコで環境にも優しい
宋氏によると、研究室で塩湖のアルカリ水を模した水を用いた実験を528時間実施したところ、マグネシウム・リチウム比が422:1から2.5:1と大きく変化し、抽出するリチウムの純度が160倍以上に改善。開発した装置のフィージビリティーと高い効率が実証されたという。朱氏は、モジュール化することにより装置の処理面積をさらに広げ、リチウム塩の生産量を高めることができると説明するとともに、「特に重要なのは、装置が太陽光エネルギーで動かせるということ。余計な電力や化学薬品を消耗する必要がなく、日照資源が豊富ながら生態環境が弱い高原地域での応用に適している上、省エネで環境にも優しい」と述べた。
研究チームは今後、実際に高原地域にある塩湖で産業化に向けた試験を重ねるとのこと。各地の塩湖はそれぞれ異なる物理的・化学的特性を持っているため、装置設計の最適化によってさまざまな条件に対応できるようにし、一日も早い実用化を目指すという。
(出典:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1811507094093676347)
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