インターネットの普及は中国の各分野に革命を巻き起こした。タクシー業界もその一つであり、アプリを使ってタクシーを呼ぶ配車サービスはもはや中国人の日常に欠かせないものとなっている。そして、配車サービスのドライバーは時間的空間的自由度の高さ、その気になれば高い報酬が得られることから新たな時代の人気職業の一つになった。しかし今、ドライバーたちは大きな岐路に立たされている。
広東省珠海市、山東省済南市、浙江省温州市など複数の年では今年の春節以降、配車サービスドライバーになろうとしている人に対する注意喚起が出された。そして5月には湖南省長沙市と海南省三亜市で当局がドライバーの営業許可証新規発行を一時停止することを発表した。ドライバーが増えすぎて飽和状態になっているのだ。
営業許可を取得したドライバーの数で計算すると、2020年時点での全国のドライバー数は289万1000人だったが、22年末には509万人と2年間で76%も増えた。一方でサービス利用者は3億6500万人から4億3700万人と20%足らずしか増えていない。新型コロナの影響、コロナ禍後の景気回復が思わしくないことなどにより配車サービス業界に入ろうとする人がますます増える一方、市場のパイはそこまで大きくなっていないのである。
パイが増えずに人だけが増えていけば、当然1人あたりの分け前が減ることになる。広東省東莞市交通運輸局によれば、今年1〜3月に同市内の配車サービスタクシーの77.3%が1日あたり10件のオーダーを受けられず、10件以上受けた車の1日あたりの売り上げも260元程度(約5100円)に留まっていることが明らかになったという。1日260元から燃料費や手数料などを差し引くとドライバーの1カ月の手取り収入は4000〜5000元(約7万8000〜9万8000円)となり、車両のリースを受けて営業しているドライバーに至ってはさらに少ない収入になる。もはや高収入という魅力はなくなってしまったと言えるだろう。
ここ数年、美団、高徳、百度、騰訊、華為などが続々と配車プラットフォームをリリースしているが、その数が増えてもドライバーの仕事が一緒に増える訳ではない。なぜなら、新規参入のプラットフォームはいずれも自ら車やドライバーを持つのではなく、顧客と各運営事業者の間に入るポータル的なプラットフォームであり、そのバックグラウンドにいる車やドライバーのリソースは業界全体で享有しているからだ。今の配車サービス業界はプラットフォームやドライバーが増えてもパイの大きさは変わらず、消耗と疲弊を呼ぶ「内巻」(内部競争)がますます激しくなっているのだ。
爆発的な成長期が過ぎ、安定的な成長期に入りつつある配車サービス業界で起きている「ドライバー飽和」の問題。業界の共倒れを招かないためにも、プラットフォーム、ユーザー、ドライバー、管理機関が持続可能な発展に向けて一緒に取り組んでいく必要がありそうだ。
(出典:https://finance.sina.com.cn/tech/csj/2023-06-07/doc-imywmksp3870397.shtml)
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