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2022.12.15
デジタル化技術の導入で「忘れられないミカン」づくりを目指す浙江省の農村

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■中国でシャインマスカットが話題に、その理由は?

ここ何か月か、中国のネット上ではシャインマスカットに関する話題が頻繁に取り上げられ、議論の対象となってきた。日本から入ってきた高級ブドウ品種のシャインマスカットは「ブドウのエルメス」と称され、高い値段ながらも香りのよさや甘み、食感のよさなどから人気となり、やがて中国国内でも栽培が始まった。噂を聞きつけたブドウ農家たちは次々に「金のなる木」としてシャインマスカットの栽培に手を出し、瞬く間に中国全土に栽培地域が広って生産量が増える一方、品質管理を疎かにしたことで大して美味しくないシャインマスカットが大量に市場に出回り、今や普通の品種と変わらないような値段でシャインマスカットが売られているという。この状況が、中国の農業が抱える問題の一つとしてクローズアップされたのだ。

 

品質を無視して大して美味しくない果物を大量生産し、市場に出すも大量の売れ残りが発生して廃棄する、という現象がリンゴ、ミカン、ブドウといったあらゆる果物の品種で発生してきた中国の農業。それが最近では若い世代により新しい考え方や技術が取り入れられ、新たな発展の兆しが見え始めている。その一例が、浙江省台州市涌泉鎮のブランドミカンづくりだ。

 

■浙江有数のミカンの里、最新機器によるデジタル選別を導入

涌泉鎮にある「忘不了柑橘専業合作社」では、収穫したミカンのデジタル選別ラインが高速運転している。きれいに洗って乾燥させたミカンをベルトコンべアに乗せると、まず「外観視覚検査システム」を通過する。この時、ミカンは33枚もの写真を撮られ、大きさや形、色合い、傷の生むなどが360度チェックされるのだ。そして、外観検査が終わると今度は「内部品質検査システム」のセクションに入る。こちらはミカンのCTスキャンのようなもので、それぞれの糖度、酸度を正確に把握し、食べる人が好みに合わせて選べるように糖度、酸度別に仕分けするのだ。

 

■若い世代の発想で、ミカンの商品価値が大きく高まる

涌泉鎮は柑橘類の栽培が盛んな浙江省の中でも果肉が柔らかでジューシーなミカンができることで広く知られ、年間のミカン生産量は約8万トンにのぼるという。これまでは伝統的な方法に頼って栽培を行ってきたが、現地の若い世代がミカン栽培にインターネットやデジタル化という新たな要素を取り入れ、ミカンの生産、販売に大きな革命を起こしつつある。彼らがまず着目したのが差別化マーケティングだ。ミカンのブランド価値を高め、忠実な「ファン」を増やすために、約2億円と投じて江蘇・浙江・上海地域で最大規模かつ最先端の柑橘デジタル選別ライン設備を導入した。デジタル選別によって「酸っぱいのが好き」「甘いミカンがいい」といった細かなニーズをそれぞれ満たすことができるようになり、ミカンの商品価値は大きく向上したという。また、デジタル化管理に加えて、新たな販売チャネルの開拓にも取り組んでいる。涌泉鎮で設立されたEC協会では、メンバーの物流コストが年間6000万円近くも削減できたとのこと。ミカン栽培に携わる人びとが豊かになるとともに、涌泉鎮のミカン産業全体の競争力も高まった。「忘不了」というのは「忘れられない」という意味。一度食べたら忘れられないおいしいミカンを、という思いのもとに、浙江省の海沿いの村が大きく成長し始めている。

 

 

 

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