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近年宇宙開発を積極的に進め、今や独自の宇宙ステーションを持つに至った中国。宇宙ステーションから地球に向けた「中継」映像が配信される機会が増える中で、宇宙飛行士たちの「カメラ映え」を良くするための「宇宙メイク」技術に関する研究が、中国の大学で進んでいるという。
甘粛省蘭州市にある西北師範大学の研究チームはこのほど、人工知能(AI)による「デジタル化粧」技術によって宇宙飛行士の顔をバーチャル修飾し、メイクがしづらい宇宙空間でもしっかりとおめかしできるシステム開発を模索する研究成果の論文が、先月発行された中国の学術誌「空間電子技術」に掲載された。
研究では、AIに対して著名人の顔写真を読み込ませ、そこで用いられているファンデーション、アイシャドウ、口紅を識別させるというトレーニングを実施した。そして、これらのメイク用品のデータを使って、使用者すなわち宇宙飛行士の顔を「メイクアップ」させるのだ。もしAIが不自然なメイクを施した場合にはペナルティを与え、より自然な仕上がりにメイクできるようAIに学ばせていく。また、出来上がったメイク画像をAIに読み取らせて、そこから使用者の「元の顔」を再現させるという作業も課し、うまく再現できなかった場合はやはりペナルティを与えて覚えさせる。これらの作業を数千枚、数万枚分実施することで、AIは見事にプロ顔負けのナチュラルメイクを体得したとのことである。
このシステム開発における大きなテーマはまさに「自然なメイクの追求」である。単に「美顔」ということであれば、中国の顔加工アプリ技術は世界トップクラスであり、わざわざ専用のシステムを作らずとも容易に自らの顔を美男美女に「加工」することはできる。しかし、研究チームのメンバーによれば、宇宙飛行士たちは「できるだけ自分本来の容貌を残した上で、身なりを整えてカメラの前に立ちたい」と考えているとのこと。宇宙空間では地球上と同じようにメイクを施すことが難しいため、特に宇宙飛行士向けの「AIメイクアップアーティスト」を育てるプロジェクトが立ち上がったのだ。
研究チームのメンバーは「宇宙空間では資源が限られていて、メイクをするための十分な水や、メイクの技法が使えない。しかも、重力が非常に小さい環境でメイクをすれば、化粧品の成分が空中を漂って各種設備の正常な作動を妨げる可能性がある。宇宙飛行士は個人としてだけではなく、国を代表して宇宙に赴いている。AIメイク技術があれば、低いコストで宇宙飛行士のイメージをより良いものにすることができる」と説明している。
中国の宇宙ステーションでは世界各地の子どもたちに向けた「宇宙授業」が予定されている。また、世界各国の科学者が多くの実験を行ったり、外国の宇宙飛行士がステーションを訪れたりする計画もある。AIメイク技術は、中国だけでなく世界の宇宙飛行士にとってもありがたい存在になりそうだ。そしてまた、中国のAI技術を「宇宙規模」で世界に改めて認知させる機会になることだろう。
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