香港に来る旅行者が街を見て驚く光景一つ、それが「竹を使った工事現場」だ。
香港は街の至る所で工事が行われている。そしてその驚くべきポイントが、どの現場も”竹を使った足場” を元に作業が行われているという事だ。
一般的に工事現場の足場と言えば、頑丈な鉄筋や鉄板で組み立てられている光景を思い浮かべる事であろう。それがここ香港では竹と竹をビニール紐のようなもので繋ぎ合わせ、実に簡単・簡素に足場が造られている。
ある時は高層ビルの壁に沿って高い場所まで竹が組み立てられているし、ある時は高層マンションの一つの部屋だけ、部屋の外に竹の足場が組まれている。
日本人観光客はそんな簡易的な足場を見て心許ないと感じたり、壊れそうで近くを歩くのが怖いと感じるかもしれない。実際筆者も暫くこの景色には慣れずにいた。
これが名物、香港の竹で足場が組まれている工事現場
ではなぜこれ程までに工事現場で竹の足場が組まれているのだろうか。これには幾つかのれっきとした理由がある、と聞く。
まず、湿気が多い香港で鉄筋を使うと錆びやすい。確かに湿度80-90パーセントという日が一般的な香港では革製品を保管するのは難しく、部屋中がカビだらけとなるほどだ。鉄も直ぐに錆びてしまうだろう。その点、竹は錆びない上に湿気でより柔軟になる性質があるという。柔軟で弾力性のある竹は、人が乗り行き来をしてもその弾力性やしなりが人の重さなどを吸収するのだと言う。
また軽い竹は持ち運びやすく組み立てやすい上、解体も樂だ。一方鉄筋の場合は組み立て等にも一苦労。重機が必要で大がかりな作業となる。
狭い香港、そして土地が少ない為に建物と建物の間が狭く、多くの建物は老朽化してあらゆる場所で改装工事が必要となってくる。そんな香港で竹の足場というのは簡単に組み立てられ、簡単に設置でき、場所も大きく取らないという事でうってつけなのだろう。
またコスト面でも竹は安くつくという。これらのメリットを考えると、竹の足場というのは香港ならではの、香港という地域性にマッチしたものであるとわかる。この土地に長く住んだ先人達の知恵や経験から産まれた賜物であるのであろう。
台風の多い香港だが、そんな時も竹で造られた足場だと風の衝撃を軽くするという話を聞いた事がある
どこでも誰でも入手できてとても簡単に作られているように見える足場ではあるが、こうした竹の足場は誰でも組み立てられるようなものではない。
足場を組みたてる事ができるのは、きちんとした技術を学び試験をパスしたものだけである。簡単そうに見える造りであっても、そこには考え抜かれた安全性や機能性の技術が盛り込まれているのである。
現場の雨風を防ぐ為の屋根も竹で造られている
生活スペースを確保しながらできた、竹のトンネル
このようにして出来上がった竹の足場であるが、場所によっては芸術作品のように素晴らしい作品のように整然と組み立てられたものもある。ある時はまあるでアート作品のように規則正しく高層ビルの壁面を覆っていたり、ある時は竹のトンネルのように歩行者の歩くスペースを確保しながらもしっかりと造られていた李する。
香港名物と言っても過言ではない、工事現場の竹の足場。香港を訪れた際は是非ともゆっくり観察をして、目に焼き付けて頂きたい光景の一つである。
工事が終わり解体した現場の竹が積み重ねられていた
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