カタールで開催されているサッカーワールドカップ(W杯)は連日熱戦が繰り広げられ、出場国・地域のサポーターのみならず世界中のサッカーファンが熱狂のさなかにある。サッカーの人気が高い中国でもネット上では連日W杯の試合結果が話題にのぼり、SNSのトレンドワードに登場する。しかし自国代表は2002年の日韓大会で初出場を果たしてから20年間W杯から遠ざかってしまった。中国サポーターが何より願っているのは、自国の本戦出場だろう。
そして中国は、自国代表の本戦出場を目指すとともに、自国でのW杯開催も目指している。そのために必要なのは、W杯クラスの機能とスペックを持つスタジアムづくりだ。W杯開催のためというわけではないが、ちょうど今北京市にある工人体育場ではスタジアムの改修作業が進められている。その目玉の一つとして注目されているのが、ブラックテクノロジーを駆使した「四季常緑」の芝生である。
スタジアムの天然芝はかつて、冬になると芝が枯れてしまって茶色くなり、一部で土が露出してしまうという大きな問題を抱えていた。そこで近年では春から秋にかけては従来の夏芝を使い、秋になったら夏芝が休眠状態となる冬に合わせて寒さに強い冬芝が生い茂るように播種するウインターオーバーシードという手法を用いることで一年を通して緑の芝生を保つようになった。ただ、この手法は夏芝、冬芝の順調な生育のためにかなりの手間とコストがかかり、グラウンドキーパーによる熟練の技と感覚に頼る部分が多い。
一方で工人体育場で先日敷設が完了した天然芝は、地面に一年中夏芝が育つ環境を作ることで四季を通じて青々とした元気な芝をキープする手法を採用している。お椀型に設計された改修後のスタジアムのピッチ部分は、従来のスタジアムとは異なり他の地面より10センチほど低くなっている。これは、通気性、光の照射、水はけといった要素を考慮してのものだ。また、ピッチの下には大小の丸石、散水システム、通気・排水管路、地熱管路など深さ2.7メートルほどの機能層が敷設されており、芝の生育を「アシスト」する環境が整えられている。
排水管路は放射状に配列され、なおかつ中央が高く外側に向かって低くなっていて余分な水がスムーズに流れていくため、大雨が降ってもピッチがプールのようにならない。また、中国北部ではおなじみの集中暖房「暖気」(ヌワンチー)を利用した地熱システムを採用、この「床暖房」によって寒さが厳しい北京でも夏芝を枯らさずに保つことが可能になった。さらに、天気の問題や屋根の新設によって不足する日照を補うために、人工照明を芝に照射するシステムも導入した。
工人体育場改修プロジェクトの責任者は、W杯や欧州5大サッカーリーグのスタジアムをベンチマークとし、世界最先端の芝生構造技術設計を用いて今回の芝生改修に取り組んだと語っている。ハイテクを駆使した新しい北京工人体育場の芝生上で、W杯のロゴが入ったサッカーボールが躍動する日は果たしてやってくるだろうか。
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