日本のスーパーコンピュータ「富岳」が最新のスパコン世界ランキング「TOP500」で2年守ってきた首位の座を米国に明け渡して2位に転落したことが報じられ、注目を集めた。トップに立った米国のスパコン「フロンティア」は1秒間に110京2000兆回の計算を行うことができ、その能力は「富岳」のおよそ2.5倍とのことだが、一体どれだけ違うのかは素人にはよくわからない。「フロンティア」はもちろんすごいのだが、「富岳」だってすごいのだ。スパコンの処理速度ランキングである「TOP500」で首位を明け渡した「富岳」だが、ビッグデータ処理能力を左右するグラフデータ(円や折れ線などのグラフではなく、さまざまな物事のつながりを示すネットワーク図のこと)解析能力を示す「Graph500」のBSF(幅優先探索)部門では5期(2年半)連続の首位を守ったのである。
ところで「富岳」などのスパコンは、1つのCPUとメモリからなる「ノード」と呼ばれる構成単位が大量に集まって成り立っている。「富岳」は特にノード数が多く、実に15万8976ものノードが集まって大規模なネットワークを構成し、超高速な計算速度と世界一のグラフ解析能力を実現しているのだ。一方、今回発表された「Graph500」のもう1つの部門であるSSSP(単一始点最短路)部門で「富岳」を抑えて1位となった、湖北省武漢市にある華中科技大学のDepGraph Supernodeはノード数が僅かに「1」。中国のメディアはこれを「世界で初めて、単一(ノード)のコンピューターがスパコンのグラフ解析性能を上回った」と伝えている。
DepGraph Supernodeは、中国政府による「グラフコンピューティング汎用コンピュータ技術・システム」国家重点研究開発計画プロジェクトの助成を受け、華中科技大学の「ビッグデータ技術・システム国家地方連合エンジニアリング研究センター」「サービスコンピューティング・システムの教育部重点実験室」と「クラスター・グリッドコンピューティングの湖北省重点実験室」からなる開発チームが長年研究を重ね、グラフコンピューティングアクセラレータやシステムソフトウェアなどさまざまな重要技術でブレイクスルーを実現し、開発されたものだ。
昨年11月に発表された前回の「Graph500」SSSP部門では、やはりノード数1である同大学のDepGraphが初登場で3位に入った。そして今回の同部門でDepGraph Supernodeが並み居るスパコンを打ち破って堂々のトップに立った。研究を主導してきた同大学の張宇・副教授は「現在、実際の業務での応用について関係機関と相談している。ソフトウェアの産業化に続いてハードウェアを産業化し、グラフコンピューティングをさまざまな業界に広げていきたい」と語っている。
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