トカゲは身の危険を感じると尻尾を切って逃げるが、時間の経過とともに切れた尻尾が再生してくる。そして両生類のイモリに至っては、手足や尻尾だけでなく、眼や心臓が損傷を受けて一部が失われても再生するのだ。人間にもそんな能力があればなあ……と羨ましくなるが、中国の研究者たちがヒトの組織の再生実現につながる新たな研究成果を発表した。
北京大学生命科学学院、北京大学・清華大学生命連合センターの鄭宏魁氏を中心とした研究チームが4月13日、小分子を用いてヒトの体細胞を変える新たな幹細胞作成技術の成果を国際学術誌「ネイチャー」で発表した。将来的には糖尿病、重症の肝臓病、悪性腫瘍といった重大疾患に応用できる可能性があるという。
生物の細胞には、無限増殖してさまざまな機能を持つ細胞に分化する能力を持つ多能性幹細胞という細胞が存在し、疾病治療や薬物のスクリーニングといった分野での応用に期待が持たれている。しかし、哺乳類がこの多能性幹細胞を持つのは胚胎の早期発育段階のみで、すぐに各種の成幹細胞へと分化して、多能性幹細胞の性質は失われる。一般的に不可逆的と認識されているこの細胞分化のプロセスを可逆化させ、成幹細胞を多能性幹細胞に戻す可能性の探求が、現在の生命科学における重要なテーマの一つになっているのだ。
鄭氏の研究チームは長きにわたりこの分野の研究に取り組んでおり、今回の研究では化学的なリプラミングの方法を通じ、小分子を用いてヒト成幹細胞を多能性幹細胞(ヒトCiPS細胞)へと誘導することに初めて成功した。そのヒントになったのが、まさにイモリなどの生物の組織再生プロセスだった。
イモリなどの生物は外部からの損傷を受けた部分の体細胞を脱分化により可塑性のある状態に変え、再度細胞分化することで失われた組織を再生する。研究グループはこのプロセスをヒトの細胞でも実現すべく、大量の小分子についてスクリーニングや組み合わせを行い、ついに特定の小分子の組み合わせにおいて体細胞の脱分化に似た現象を起こし、CiPS細胞へと誘導させることに成功した。
これまでの幹細胞を用いた再生技術に比べて、CiPS細胞誘導技術はより安全かつ簡単で標準化やコントロールがしやすいという大きな強みを持っており、より広い臨床応用が実現できる可能性を持っている。いつかは人類もイモリのように、手足をはじめとするあらゆる器官が再生可能となる時代がやってくるかもしれない。
(出典:https://xw.qq.com/cmsid/20220416A000T800?f=newdc)
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