中国科学院金属研究所は10月30日、同研究所の研究チームが新たな生分解性金属血管ステントの開発に成功したことを明らかにした。冠動脈など重要な血管の狭窄を防ぐための網状筒であるステントを用いた手術、治療法に新たな選択肢をもたらすことになる。
■生分解血管ステントの利点と問題点
生分解性血管ステントは、血管に取り付けて血管拡張の役割を全うしたのち、一定の時間をかけて分解されて生体に吸収されることから生体適合性が高いという特徴を持つ。一方で、現在世界で入手可能なマグネシウム合金の生分解性血管ステントは、臨床現場で広く用いられているコバルト・クロム・L605メタル合金製の非生分解性ステントよりはるかに低く、強度を出すためにステントの壁を厚くする必要があるため、血管の修復効果に影響を及ぼすという。また、鉄合金は高い強度を持つ一方で、分解率速度が遅く、局部的な腐食が発生しやすいという欠点を持っていたという。
■「高窒素合金」により強度を大幅に向上
そこで研究チームは「高窒素合金」のアイデアを用い、大量のナノ双晶や超微細ナノ双晶組織を得るとともに、窒素固溶体とナノ双晶強化、および超微細ナノ双晶による平面すべり塑性の促進を通じて、高窒素鉄合金の強度と塑性を同時に向上させることに成功。降伏強さを750メガパスカル、引っ張り強さを1000メガパスカル以上、破断伸びを50%以上にまで高め、コバルト・クロム・L605メタル合金よりも高い強度を実現した。
■高速で均一的な生体内分解も同時に実現
研究チームは同時に、「高窒素合金化」を利用して大量の鉄―窒素クラスター(FeN)を構築する新たな考え方も提起。分解時の酸素還元抑制プロセスを回避して鉄合金の急速な非酸化還元分解反応を実現するとともに、内因性腐食抑制分子のアンモニア(NH3)が局部的な腐食を抑制することで、分解速度を非高窒素鉄合金より60%以上向上させたほか、表面の孔食のサイズを大幅に縮小させ、かつ分布をより均一にすることに成功した。
■動物実験により高い生体適合性も証明
研究チームによると、動物を用いたin vivoおよびex vivoの評価により、新開発の高窒素鉄合金を用いた生分解性血管ステントの優れた生体適合性が示され、ステントを動物の血管に移植した後、炎症因子の遺伝子やタンパク質の発現、血液ルーチン、血液生化学、主要臓器といった指標はすべて正常を保ち続けた。高窒素鉄合金には金属アレルギーを引き起こす主な要因とされるニッケルが含まれておらず、この点でも高い安全性を確保できるという。
(出典:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1814334228249509969)
株式会社フライメディアは、映像制作を中心に、海外、主に中国、台湾、香港のリサーチ、コーディネーションサービス、ライブ配信サービスをご提供している会社です。
本日御紹介した「中国の研究チーム、既存品の弱点を克服した新たな生分解性金属血管ステントを開発」関連についてもっと知りたい方、写真の使用をご希望の方は、是非お問い合わせください。