安徽省合肥市にある中国科学技術大学工程科学学院・ヒューマノイド研究所の李木軍准教授と張世武教授がこのほど、同大学生命科学・医学部の胡兵教授と共同で、生き物を適切な力で迅速かつ安全に把持できる新しいタイプの多孔質磁性ソフトグリッパー(PMSG)を開発した。
■磁性ソフトグリッパーの長所と課題
磁性ソフトグリッパーは柔軟性やレスポンスの速さで高く評価されており、特に、デリケートな力加減が要求される生物の繊細なハンドリングに適しているものの、実際に生物を傷つけることなくつかむ上で、さらなる操作性の向上が研究者の間で大きな課題とされてきた。研究チームはこの課題に対し、多孔質構造を磁性シリコンエストラマーに導入してPMSGを作成。高い磁性と低い弾性率、粗い表面といった表面上の特性をもたせることで優れた柔軟性と形状適合性を実現するとともに、物を急速につかんだ際の衝撃を低減することに成功した。
■複雑な形状や形が変わるものを優しく安定的につかめる
開発した多孔質磁性ソフトグリッパーは、さまざまなサイズや質感の物体を容易に把持することが可能で、高い柔軟性により複雑な形状や絶えず変化する形状のものを安定的につかめる。特に不規則な形状や変形しやすい物体を扱う場合に従来の機械式グリッパーよりも高い信頼性を発揮することができる。高い磁性と低い弾力性によって、把持による衝撃を弱めつつ磁場の変化に素早く反応する。例えば、殻をむいたうずらの生卵を崩すことなく素早く安全につかむことができるができるという。生きた試料に対し一定の穏やか圧力を加えながら優しく安全に保持することができるため、バイオメディカル用途、特に細胞操作への応用が大いに期待されており、医療用マイクロマニピュレーション設備の革新に新たな可能性をもたらす可能性がある。
■遠隔操作により、ドローンとの組み合わせも実現
研究チームはさらに、遠隔操作可能な多孔質磁性ソフトグリッパーも開発。従来の磁気駆動グリッパーにおける大型電磁場コイルへの依存を克服し、モバイルプラットフォームと組み合わせてより広範な使用シーンで使えるようにした。実際に移動式ロボットと組み合わせた実験では、ひよこを優しくつかんで定点移動することに成功した。また、ドローンと組み合わせることによって水中を泳ぐ魚を捕まえ、速やかに離れた場所に移動させることにも成功。つかんでから移動先で離すまでの過程で、魚が暴れることはなかったという。これらの結果は、生物サンプル採取やバイオ医学研究においてもこのグリッパーが大きな役割を発揮する可能性があることを示すと言える。
■可能性が無限に広がる万能な「指」
壊れやすいものや、変形しやすい柔らかいもの、活発に動く生物などは、適切な力加減でつかむことが難しく、無事に持ち上げて移動させるには相当な精神力と手先のコントロール力が求められる。あらゆる物を確実に、しかも優しくつかんで持ち上げてくれる多孔質磁性ソフトグリッパーはあらゆる分野、シーンで重宝されることだろう。
(出典:https://kyb.ustc.edu.cn/2024/1011/c6076a656271/page.htm)
株式会社フライメディアは、映像制作を中心に、海外、主に中国、台湾、香港のリサーチ、コーディネーションサービス、ライブ配信サービスをご提供している会社です。
本日御紹介した「どんなものでも優しくつかめる軟体の「指」、中国の研究者が開発に成功」関連についてもっと知りたい方、写真の使用をご希望の方は、是非お問い合わせください。