丈夫で加工がしやすく成分が安定していることから、食品容器や包装を始めあらゆるシーンで利用されているプラスチック。便利な一方で自然分解が難しく汚染問題を引き起こしているほか、人工的な分解も時間とコストがかかるといった問題点もある。上海市にある華東師範大学化学分子工程学院の研究チームは昨年、12年にわたる研究の末、太陽光触媒を使って常温でプラスチックを分解し、反応生成物はプラスチックの再生産に利用できるという「生産-利用-分解-再生産」の閉ループシステムの構築に成功した。
■光触媒に用いるのは……
研究チームが開発したプラスチックの光分解は、ウラニルイオンを触媒とする。ウラニルイオンはウランから得られるが、使用するのは放射性元素として知られるウラン235ではなく、非放射性のウラン238。しかも、ウラン238は海水中に豊富に含まれているため、放射能の危険性や資源枯渇を心配することなく触媒として利用できるという。
■プラスチックを常温常圧で原料レベルに分解
既存のプラスチック分解技術は通常、高温高圧を必要とするため、多くのエネルギーを消費する必要がある。研究チームは硝酸ウラン六水和物を光増感剤として用い、室温かつ常圧の環境下で一般的なプラスチック9種類を安息香酸やテレフタル酸などの化学製品原料に分解することに成功した。研究チームを率いる姜雪峰教授は「酸化プロセス全体におけるウランの作用は、化学結合を完全に破砕することなく切断できるというユニークなもので、正確な分解を可能にするとともに、炭素の排出を抑えられる」と語った。
■不純物が付着したプラスチックも分解可能に
ただ、実験室で用いられてきたプラスチックは乾燥した不純物のないものだった。一方で日常的に用いられているプラスチックは水分や、砂糖のシミ、着色料、接着剤などさまざまな不純物が付着している。このギャップを埋めるべく研究チームは体系的な調査研究を進め、付着物のある現実世界のプラスチックを少ないエネルギーで分解する技術システムを徐々に確立し、水が残ったペットボトル、着色料が使われたゴミ袋、混合プラスチックを直接光分解し、反応生成物を引き続きプラスチックの製造、または医薬中間体や香料などの製造に使用できるようにした。
中国では毎年6000万トン以上の廃プラスチックが生産されており、その累積量は10億トンを超えているという。1トンの廃プラスチックをリサイクルすることで、1〜3トンの二酸化炭素排出量削減が可能となるため、この研究成果は大きな注目を集めている。研究チームは今、実験室を飛び出し、実際の産業におけるプラスチックの閉ループシステム構築に向けた取り組みを進めている。
(出典:https://www.ecnu.edu.cn/info/1426/65011.htm)
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