中国・浙江大学化学部の唐叡康教授、劉昭明研究員らによる研究チームが先日、有機化合物と無機イオン化合物を分子レベルで結合させることで同じ物質において硬度と弾性を両立させ、なおかつプラスチックのような可鍛性を持つ新物質「弾性セラミックス・プラスチック」を発明し、論文が今年6月に学術誌「ネイチャー」オンライン版に掲載された。
セラミックスは高い強度を持つ一方で、限界を超える力が加わると割れたり欠けたりしてしまうという欠点がある。今回発明されたのは無機物であるセラミックスの強度と硬度と、ポリマーの変形性、柔軟性、弾力性を併せ持つという全く新しいもので、材料科学界だけでなく、科学界全体にとっても興味深い内容だ。開発されたのはボタンのような形状をした小さな黄色い塊だが、この塊が秘めている可能性は計り知れない。
イオン結合を基本とする無機化学と、共有結合を基本とする有機化学では物質の調製方法がまったく異なり、相容れないものと認識されてきたが、唐教授の研究チームは2019年に「無機イオンオリゴマーとその重合反応」という新しい概念を提唱し、両者の境界を打ち破った。そして「有機化学を使って無機材料を作ることはできないだろうか」という課題のもとで、研究グループは多くの実験を重ねてきた。そして、有機化学における「官能基化反応」の合成概念を無機合成化学に持ち込み、無機イオンオリゴマーの官能基化反応をデザインし、有機機能分子を無機イオン分子に引き込むことで、有機部分と無機イオン性部分の両方を持つハイブリッド分子の合成に成功した。
常識を打ち破るこの新物質は分子レベルで言えば、無機イオン結合ネットワークと有機共有結合ネットワークが絡み合う物質ということになり、マクロ物質レベルで言えばゴムとセラミックスの両方の特製を持つ複合プラスチックとして捉えられる。大理石のような硬さと同時にゴムのような弾力を持ち、プラスチックのような可塑性を備えながらプラスチックのように熱で軟化、変形することはないという新たな物質について唐教授は「分子、構造、材料の分野で新たな世界を切り開いた。基礎化学から材料科学までのさまざまな研究分野で応用されることが期待されるとともに、将来の科学研究に向けてさらに多くの想像の余地をもたらす」と語った。
(出典:https://paper.sciencenet.cn/htmlnews/2023/6/502427.shtm)
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