今年は申年、上海京劇院が総力をあげて京劇版西遊記「孫悟空」の特別演目を上演している。孫悟空の演目はシリーズもので、全4回公演。すでに1月、5月に上演されており、今回シリーズ第3弾「真贋の二人悟空(原題:真假美猴王)」が9月3日、4日の2日間歴史ある逸夫舞台にて上演された。
おなじみの一行が揃うと、客席も大興奮!(撮影:盧雯)
「孫悟空」は国籍を問わず愛されるキャラクター、928ある客席は連日満席で、「孫悟空」という演目の人気の高さがうかがえた。日頃は年配者の多い客席だが、連日とも客層は老若男女幅広く、到るところから子どもたちの楽しそうな声も聞こえた。
どっちが本物の孫悟空?最後までハラハラするアクションが!
(撮影:虞凱伊)
9月の公演の見どころは、天竺に向かう三蔵法師の一行に偽物が現れるところで、2組8名が揃うと、舞台が小さく見えるその迫力に客席からも大歓声が起こった。また天界や冥界で大立ち回りをしても見分けがつかない孫悟空にハラハラドキドキ。最後まで目の離せない見応えのある舞台に、カーテンコールでは拍手が鳴り止まなかった。
公演劇場は100年以上の歴史を誇る上海天蟾逸夫舞台
主演の嚴慶谷さんは京劇の丑役(道化役)を専門とする国家一級俳優。日本に留学し、能や狂言を研究した経験を持ち、日本語も堪能。上海では日本人を中心とする後援会もあり、国際交流にも積極的に取り組んでいる。今回の公演では主役を演じながら脚本も手がけ、伝統的な京劇を分かりやすく、楽しく見てもらえるようにと現代風のアレンジを加え、新しい京劇版の孫悟空を編み出した。
「京劇という伝統文化を今の若者にもっと見てほしい」と伝統文化離れを危惧する嚴さんは、原則として「机ひとつと椅子ふたつ」で全ての場面を表現すると言われる京劇の伝統に、あえて豪華なセットや幻想的な舞台演出を用いて若者や初心者など幅広く楽しめるように工夫した。
ロビーには終演後に嚴さんのサインを求める長蛇の列
時にコミカルに、時にスリルあふれる演技に客席がわき、舞台上の役者と客席が一体となるライブ感を一度味わうと、もう一度劇場へ行きたいと思う観客も多いはず。見せ場や役者が見栄を切ると「ハオ!」と常連の観客より掛け声がかかる。歌舞伎の大向こうのようなものだが、そのタイミングに熟練の技を感じ、つられて声を掛けたくなるが、なかなかハードルは高い。
一般に「台上一分鐘、台下十年功(舞台の上での1分は舞台の下での10年の練習に支えられている)」と表現される京劇だが、この掛け声も何度も劇場に足を運んでこその「ハオ!」なのだろう。シリーズ最終章の公演は12月31日、すでにチケット予約が殺到している。
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