香港の小さな島が年に一度、最も熱くなる夜―長洲島の「太平清醮」

香港島の西に浮かぶ小さな島、長洲島。普段は風光明媚で静かな港町だが、伝統の祭り「長洲太平清醮」が開かれる旧暦4月になると、別の顔を見せる。今年は5月21~25日の日程で道教の儀式のほか、華やかなパレード、そして深夜の饅頭争奪戦などさまざまなイベントが行われ、島は熱狂に包まれる。
 
 
■「長洲太平清醮」の由来
長洲太平清醮は100年以上の歴史を誇る香港を代表する伝統行事で、2011年に国家級無形文化遺産に登録されている。その起源は清朝末期にまで遡り、当時島で発生した疫病を鎮めるために北帝神像を神輿に乗せて街を練り歩き、壇を設けて祈祷・鎮魂を行ったところ、災厄が去ったという伝承に基づく。
 
以来、島民は毎年この伝統を継承し続けており、祭礼で北帝に供える平安包(饅頭)がいつしか祭りの象徴として定着し、「包山節(饅頭祭り)」の名で広く知られるようになった。そして今では香港内外から数多くの観客が訪れる一大祭典となったのだ。
 


■5月21〜23日:島を包む祈りの日々
祭りの期間中、長洲島は観光客向けのイベントが行われるだけでなく、島民の切実な祈りに根ざした儀式の場にもなる。伝統に従い、島内の多くの商店や飲食店は期間中に菜食に切り替えるか営業を控え、島全体が斎戒の空気に包まれる。
 
また、神功戲と呼ばれる神事演劇が連日上演されるほか、23日には北帝廟前の特設舞台で道士が令旗を手に五方の神々へ祈りを捧げる道教儀式が執り行われる。華やかなパレードや深夜の饅頭争奪戦に先立つこの数日間こそ、祭りの本来の姿を垣間見ることができる時間と言えるだろう。

■5月24日:華やかなパレードと祭りのクライマックス
祭りのハイライトの一つであるパレードは、5月24日に実施される。きらびやかな衣装を身にまとった子供たちが歴史上の人物や神々、あるいは現代の著名人に扮し、高い台座の上で宙に浮いているかのような姿で街を練り歩く。色鮮やかな旗がなびき、伝統的な音楽が響き渡る中で行われるこの巡行は、疫病を退散させたというかつての神事の姿を今に伝える貴重な光景である。
 

■圧巻の深夜決戦:5月24日深夜の「搶包山(饅頭争奪戦)」
祭りの最高潮となる「饅頭争奪戦」は、5月24日の午後11時30分から翌25日の午前0時45分にかけて開催。予選を勝ち抜いた12名の選手が高さ14メートルの饅頭山を駆け登り、3分間の制限時間内にどれだけ多くの饅頭を奪えるかを競い合う。饅頭には場所によって異なる得点が設定されており、合計得点が最も高い者が勝者となる。
 
通算3回の優勝を果たした選手には「包山王中王(キング・オブ・キングス)」や「包山后中后(クイーン・オブ・クイーンズ)」という名誉ある称号が贈られるため、選手たちも気合十分でレースに臨み、観客はスリルと興奮に満ちたレースを観戦できそうだ。
 
なお、観覧には無料の入場チケットが必要であり、当日の午後10時から長洲消防局のすぐ側にある「北社一里」付近にて先着順で配布されるとのこと。入場券制という点からも、このレースの人気ぶりがうかがえる。


 ■アクセス
長洲島へはセントラル(中環)5号埠頭から新渡輪(サン・フェリー)で約35〜60分。太平清醮の期間中は増便がなされ、深夜の饅頭争奪戦終了後もセントラルへ戻るフェリーに合わせて旺角・元朗など各方面への深夜バスが運行される。このため、観客も帰りの交通を心配することなくイベントを楽しむことができる。
 
疫病退散から始まった島民の切実な祈りと感謝が、100年以上を経た今も息づく「長洲太平清醮」。祭りのフィナーレを飾る深夜の饅頭争奪戦が行われる24日、長洲島は1年で最も熱い夜を迎えることだろう。

出典:U港生活
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