上海料理の特徴と言うと「濃油赤醤」。油を多く使い、醤油で味付けをする。また砂糖を多用する特徴もあり、「見た目茶色、食べると(甘めに偏り気味の)甘じょっぱい」というのが多くの上海料理に共通する。今回は上海の古い街並みが残る進賢路で上海家庭料理を味わった。
進賢路は旧フランス租界のエリアにある。短い道だが道の沿道には古い長屋風の建物がそのまま残り、一階がこじんまりとした商店、上階が住居となり、味のある風景を醸している。特に夜はバーや日本風の居酒屋も開店し、賑やかである。
そんな進賢路にある老舗上海家庭料理店が「茂隆(マオロン)」。こざっぱりとした店構え、店内に引かれた白いカーテンは日本の昭和時代にあった食堂を彷彿とさせる。店内はテーブルが5卓のみ。ホールは店主夫婦で切り盛りしている。予約は受け付けておらず、満席時は外で席が開くのを待つ。
各テーブルにメニューがある。中国語がおぼつかない旅行者は番号で注文しても良いだろう。茂隆の看板メニューは1番の「紅焼肉(ホンシャオロウ)」。いわゆる豚の角煮の上海料理バージョン。ミシュランの評価も得た一品である。2番の「紅焼肉尖椒(ホンシャオロウジエンジャオ)」は紅焼肉に尖椒(ジエンジャオ:唐辛子)を加えて調理したもので「少し辛くなる」とのお店の方の話。こちらもこのお店で注文されることが多い料理である。メニュー内の料理はどれも上海の家庭でよく食べられている料理ばかり。
今回注文した料理は、メニュー番号2「紅焼肉尖椒(ホンシャオジエンジャオ)」。上海版豚の角煮。上海料理の特徴をよく表している茶色の外観に甘めの味付け。紅焼肉単体よりも唐辛子(ここで使われているのはほんのり程度の辛い味がするピーマン)が使われていることで、肉だけの脂っぽさが緩和されてピリッとした味わいになり箸が進んだ。
次いではメニュー番号51の「酒香草頭(ジューシャンツァオトウ)」。ウマゴヤシという一見クローバーの葉のような青菜を炒め、白酒で香りづけしたもの。日本では食べない青菜の為、珍しい味わいにびっくりすることだろう。青菜自体の味はごく少々の苦味があるものの、白酒の香りととても合う。コッテリした紅焼肉の箸休めにもちょうどいい一品。
メニュー番号28「白切肚尖(バイチエドゥジエン)」。豚の胃を茹でたもの。シンプルに醤油につけて食す。モツよりも癖のない味、分厚いものの程よい弾力があり噛み切れる食感で、モツが苦手な人も食べやすいと感じる。
メニュー番号48「韮黄炒蛋(ジュウツァイホゥアンダン)」。店主が「日本人のお客にも好評のメニュー」と教えてくれた。緑のニラよりも柔らかく、風味も穏やかな黄ニラに、優しい味の卵がよく似合う。
筆者が食事を楽しんでいる間、お客はひっきりなしに入店。都度店主は外で順番待ちをするよう声をかけていた。予約は受け付けていないため、ピーク時間を避け(昼は12時、夜は6時過ぎ)、開店直後に行くことをお勧めする。実はこのお店、日本人有名人歌手もお気に入りのお店という噂を聞きつけ、接客に忙しい店主の暇を見つけて伺ったところ本当にそうで、今も彼のサインを大事に取ってあるとのこと。近日訃報があった彼の思い出話を、忙しい中語ってくださった。日本人のみならず、多くの中国人に愛された彼のご冥福を心よりお祈りする。
食事後は進賢路を端まで歩き、気になるお店を見つけたら入ったり、路地散策を楽しむと良いだろう。
店名:茂隆餐厅(マオロンツァンティン)
住所:上海市進賢路134号
この進賢路、上海を訪れる日本人の定宿的存在のガーデンホテルのすぐ裏にある道。もし宿泊する機会があればぜひ立ち寄ることをお勧めする。
株式会社フライメディアは、映像制作を中心に、海外、主に中国、台湾、香港のリサーチ、コーディネーションサービス、ライブ配信サービスをご提供している会社です。
本日御紹介した「連日行列!あの日本人大物歌手も来店したお店で上海家庭料理を味わう」関連についてもっと知りたい方、写真の使用をご希望の方は、是非お問い合わせください。