中国サッカーの未来は明るい?ローマで輝いた、中国の民間少年クラブの子どもたち

今年5月31日から6月2日にかけて、イタリア・ローマで開催されたU12(12歳以下)の国際サッカー大会「シジスモンディカップ」。欧州の名門クラブが数多く参加するこのハイレベルな大会で、中国の民間サッカー育成プロジェクトによるチーム「中国足球小将(2014世代)」が初出場にして7戦全勝優勝を飾る快挙を成し遂げた。

7戦全勝、欧州名門クラブを破っての優勝

シジスモンディカップは、英プレミアリーグのエヴァートンや、デンマークのコペンハーゲンといった欧州プロクラブの下部組織(アカデミー)が参加する伝統あるユース大会である。

初参戦となった「中国足球小将」は、組織的な守備と素早いアタックを武器に勝利を重ねていき、「7戦全勝、総得点21、失点2」という成績をマーク。6月2日に行われた決勝では、名門エヴァートンU12との接戦の末、PK戦を制して優勝を果たした。

当初は現地での知名度が低く、日本のチームと勘違いさえされたようだが、試合を重ねるごとにピッチ上でのパフォーマンスが評価され、現地の観客やスカウトから注目を集める存在へと変わっていった。

■伝統武術をルーツに持つエースの身体能力

この大会で注目を集めた選手の一人が、孟新芸選手だ。決勝のPKを決めた直後にピッチ上で連続バク宙を披露するなど並外れた身体能力の持ち主で、幼少期の武術トレーニング経験がその基礎を作り上げた。

孟選手の父親は伝統武術の盛んな河北省滄州市の出身であり、孟選手も4歳から武術の基礎訓練を受けていた。そこで培った体幹の強さ、柔軟性、空中でのバランス感覚が今、瞬発力や空中戦での強さに直結しているという。

■現地でのサポートと孟選手の約束

遠く離れた異国の地、ローマでの遠征中に選手たちの支えとなったのが、現地に暮らす人々による熱心なサポートだった。例えば、飲食店経営者らは選手たちのために冷たい飲み物を手配し、毎日のようにスタジアムへ駆けつけて声援を送ったという。

孟選手は、サポートしてくれた中華料理店の店主から「ゴールを決めたら目の前でバク宙を見せてほしい」と声をかけられていたとのこと。最もプレッシャーのかかる決勝の舞台でゴールを決め、その約束を最高の形で果たした。

SNSでの拡散と父親の冷静な対応

大会後、孟選手のバク宙動画はSNS上で急速に拡散し、父親のアカウントには一晩で14万人もの新規フォロワーが集まった。複数のスポンサー契約や商業出演のオファーも舞い込み、大きな注目を浴びることとなった。裏を返せば今大会の快挙は中国のサッカーファン、中国のネットユーザーにとってはまさに「お祭り騒ぎ」のトピックになったのだ。

しかし、息子のフィーバーぶりに対して、父親である孟慶華さんの反応は極めて冷静だった。「息子はまだ12歳であり、一時の注目やビジネスに振り回されるべきではない」として、すべての商業的なオファーを断り、息子をメディア露出から遠ざけた。

孟家は、練習環境を整えるために引っ越しをするほどサッカーに熱意を持つ一方、学業をおろそかにしないことも徹底しているという。孟選手は学業の成績も優秀で、国際舞台を見据えて外国語の学習も継続している。一時のブームに流されず、文武両道で地に足のついた成長を見守る家族の姿勢が、彼の強さを支えているのだろう。

■民間プロジェクトは中国サッカーの未来を変えるか

「中国足球小将」は、公的な強化指定アカデミーではなく、サッカージャーナリストの董路(ドン・ルー)氏が立ち上げた独自の民間育成プロジェクトである。

董氏は、「若いうちから海外のレベルの高い強豪と真剣勝負を重ね、ピッチ上で勝ち癖を体感させることが、将来の自立したプロアスリートを育てるために不可欠である」という哲学のもと、無償での指導と遠征の機会を提供し続けている。

大人世代の代表チームが長期的な低迷から抜け出せない中、少年たちは自分たちの力で欧州の壁を乗り越えた。その姿は、単にサッカー競技での話にとどまらず、教育や青少年育成において「何が本当に子供たちの力になるのか」を改めて考える必要性も訴えているようだ。

これから10年後、心と体の成長期を経た「中国足球小将」たちはどんな人生の「ピッチ」に立っているだろうか。中国のサッカー界がこの先この子たちをどう育成していくのか。その答えが、楽しみだ。

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