爆発的に増殖する中国AIショートドラマの現在地

■TikTokだけで半年に22万本のAIショートドラマが公開

中国ではここ1~2年、すき間時間に見られるようなショートドラマが爆発的な人気を集めている。スマホで見やすいように縦画面で作られた1話1〜2分ほどのドラマで、数十話から百話近くを一気に配信する形式である。このショートドラマの制作現場で、俳優もロケも使わずAIだけで完成させた作品が一気に主流になった。

中国の動画アプリ「抖音(Douyin、TikTokの中国版)」で2026年1〜6月に公開されたAI生成のショートドラマとアニメショートドラマは、22万1900本にのぼる。1日あたりに直すと約1200本、1分ちょっとで1本公開されるペースだからその勢いは相当なもの。とても全部は見きれない。

■安さと速さで、撮れなかった題材が撮れるようになった

AIで作るアニメショートドラマの制作費は、実写ショートドラマのおよそ5分の1とされる。手間とコストの大幅な削減、これもAIドラマの爆発的な増加を生む要因になったことは想像に難くない。

象徴的な例が、2026年春の清明節前後に話題になった「紙手機(紙の携帯電話)」という作品だ。死ぬことの意味がまだわからない男の子が、15元を握りしめて、亡くなった祖母と話すための紙の携帯電話を買いに来る話で、紙細工の店の主人が優しい嘘で応えるという内容で注目を集めた。

この作品を手掛けたのは李婷さんと楊選さんの2人で、構想から完成までわずか3日だったという。実際に撮影した小道具は段ボールに手描きした携帯電話だけ。そんな作品がネット全体で再生数4000万回を超え、コメント欄には「いちばん人間味のないAIが、いちばん人間味のある短編を作った」という称賛の声が並んだのだからすごい。

「紙手機」は約5分の単発作品で、数十話続く連続もののショートドラマとは性格が違う。とはいえ、生成AIドラマの実力と勢いを感じるには十分な事例と言えるだろう。

■どの作品も同じ顔に見える

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの中国生成AIショートドラマだが、作品が量産される中で問題が次々と浮上している。

まずは、作品のマンネリ化、没個性化だ。実写風作品が大幅に増える中で多くの作品が似たようなAIキャラクターの顔を使い回す状態になり、中国では「千人一面」という言葉で問題視されるようになったのだ。

また生成AI特有の「雑」さも顔を出すようで、主人公の耳たぶが回ごとに違う、脇役の指が1本多い、といった現象がしばしば視聴者に発見されてネット上で話題となる。もはや違和感や不自然さ、作画崩壊といったネガティブな部分が、各作品の持ちうる数少ない「個性」となってしまっている状態だ。

■元が取れるのは77本に1本

そして、大量発生した生成AIショートドラマが全部ヒットするわけではなく、注目を集めて収益化できるのは一握りに過ぎない。今年1~6月に公開された22万1900本のうち、制作費を回収できたのわずか1.3%だった。残りの98.7%は、公開から半年たっても損益分岐点に届いていない。また、再生回数が1億回を超えた作品は1055本、全体の0.48%である。

儲け話に多くの人が一斉に飛びつき、供給過剰で結局共倒れになるというのは昔からよくある話だ。AIで制作のハードルは下がったものの稼ぎやすくはならず、むしろ赤字になりやすくなったというのが業界内の主な見方のようだ。

■他人の顔を勝手に使う問題も

実写風のAIドラマが増えるにつれ、実在する人の顔を無断で使う問題も表に出てきた。

被害は有名人にとどまらない。漢服好きの一般の人が自分のメイク写真を無断で使われ、強欲で好色な悪役にされたと訴えた一件がSNSでトレンド入りした。新華社の調査によると、一部の制作会社はAIの学習用に顔のデータを有償で集めており、肖像の1年間の使用許諾は100〜200元だったという。トラブルには往々にしてビジネスの影がつきまとう。

■配信アプリと当局が絞り込みに動く

問題が大きく取り沙汰されるようになる中で、配信側も対策を始めている。「紅果短劇」はAIキャラクターの使い回しを避けるよう求め、同じ顔を頻繁に使う作品には推薦の配信をゼロにする措置を取った。抖音も8月、公開前に肖像権と著作権のリスクを調べるツールを導入した。

当局側では、国家ラジオテレビ総局が定めた「微短劇発展管理弁法」が9月1日に施行された。ショートドラマを投資額と題材で3つの区分に分け、区分ごとに許可や審査の手続きを変える仕組みで、AIで生成・制作した作品は各話の目立つ位置に表示を入れることを義務づけた。

■中国の生成AIショートドラマは、どこへ向かうのか

「粗製乱造」という言葉で形容されても仕方がない今の中国の生成AIショートドラマ業界。この先は視聴者に飽きられる、当局の規制が強まるといったことからブームは収束に向かっていき、「紙手機」のように人間の心に刺さるような作品や個性的な作品が生き残っていくことだろう。

道具がAIになっても、作品の評価と責任を背負うのは人だ。AIショートドラマが一つのジャンルとして根づくのは、作品が作り手の名前で語られ、見た人がその名前を覚えて次の作品を待つようになったときである。

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