シルクロードの中継地、敦煌が誇るオアシス観光地の鳴沙山・月牙泉風景区

甘粛省の敦煌は古くからシルクロードの中継点として大いに栄えてきた、砂漠のオアシス都市だ。その敦煌に「月牙泉」と呼ばれる湖がある。湖はその名の通り三日月のような形で、水は青く済んでいる。その姿は無味乾燥な広大な砂漠の中に咲く花のような美しさであり、隣接する大きな砂山「鳴沙山」とともに敦煌屈指の観光地「鳴沙山・月牙泉風景区」として観光客の姿が絶えない。

■巨大な砂山と三日月の泉が織りなす自然の奇跡

鳴沙山・月牙泉風景区は敦煌市から南に5キロの場所にあり、76.82平方キロの広大な面積を誇る。鳴沙山は東西40キロ、南北約20キロにおよび、赤、黄、緑、黒、白からなる五色の砂が堆積して山をなし、風が吹くと砂が鳴くように音を立てることからその名がついた。鳴沙山に抱かれるように位置する月牙泉は降水量が少ない地域にあっても枯渇しない「奇跡の泉」だったが、20世紀後半に環境悪化により水域が縮小、5メートルほどあった水深も1メートル未満にまで低下した。今世紀に入って行政による保全の取り組みが本格化し、今では元の水深に戻りつつあるという。

1994年に国家重点風景名勝区に指定され、2005年には「中国の美しい砂漠5傑」に選ばれた。さらに15年には中国国内最高規格の観光地を示す「国家5A級観光地」と世界ジオパークに認定された。かねてより人気の観光地だったが、特に昨年より客足が急増。5月1日のメーデー連休には「砂漠のオアシスに人の海」と形容されるほどの盛況ぶりとなった。

■観光の目玉は砂漠をゆくラクダ隊列

見どころの多い鳴沙山・月牙泉風景区の中でも観光の目玉となっているのが、ラクダに乗っての砂漠散策だ。風景区がある月牙泉村では2000頭以上のラクダが飼育されており、ローテーションで砂漠散策の仕事を担当しているとのことで、早朝と夕方には長い列をなしたラクダたちが飼育者の先導で「出勤」する貴重な光景も見られるという。観光客を乗せ、鈴の音を響かせながら隊列のラクダが悠長に砂漠を歩く様子が風景区を象徴する光景になっている。吸い込まれるような広い空と果てしない砂漠の中、ラクダの背中に乗ってゆったりと遊覧する気分は日常生活では決して味わうことのできないものだろう。

■星空コンサートの新たな試みも

ラクダたちが地元の観光業を盛り上げるとともに、現地ではさらに観光客を呼び込むための試みも行われている。今年のメーデー連休中の5月1日、風景区で「1万人の星空コンサート」が開かれた。会場は鳴沙山のど真ん中で、公演開始前の午後6時にはすでに多くの来場者が砂漠を埋めていた。日が沈んで暗くなった鳴沙山で600平方メートルの巨大な中国国旗が来場者の手によって掲げられてコンサートが始まり、馴染み深い民族楽曲が次々披露された。来場者は満天の星空の中で曲に合わせてペンライトやスマホのライトを振りながらロマンティックな時間を過ごした。遠くから眺めた会場でライトの点々が光る様子は、まさに砂漠の中に描かれた「星空」のようだった。

ここでしか体験できない雄大な自然が織りなす美しい景色と楽しいアクティビティが鳴沙山・月牙泉風景区の大きな魅力。環境や生態系を守りつつ観光資源の有効活用を通じて地元経済を活性化させるお手本とも言えるこの観光地は、今後も多くの観光客が訪れることだろう。