スリルと迫力満点!端午節の風物詩、ドラゴンボートレース

■中国の「端午節」の名物と言えば…

日本では5月5日は「子どもの日」の祝日だった。もとは端午の節句として男の子の健やかな成長を願う祭日であり、この日に合わせて鯉のぼりが泳ぎ、兜飾りが出され、ちまきを食べたり菖蒲湯に入ったりといった習慣がある。その起源は古代中国にあり、中国では旧暦5月5日が「端午節」の祝日に制定されている。ちなみに今年の端午節は5月31日で、中国では6月2日までの3連休となる。

この端午節では、中国の南方を中心にドラゴンボートを漕ぐイベントが各地で開催される。その起源は春秋戦国時代の詩人・屈原が国を憂いて川に身を投げ、人々がドラや太鼓を打ち鳴らしながら川を捜索したことだと言われており、その後各地で小舟によるレースが行われ、現在のドラゴンボートレースに発展したとのことだ。

■究極の団体競技、ドラゴンボートレース

ドラゴンボートは、その名の通り龍を模した木造の船に漕ぎ手20人、舵取り1人、鼓手1人が乗り込む。鼓手が威勢よく太鼓を打ち鳴らす中で漕ぎ手が息を合わせて高速で漕ぎ進め、舵取りがボートの進行方向を微妙に調整していく。世界規模で行われる公式競技では距離ごとのタイムを競い、ゴールラインを早く漕ぎ抜けたチームが勝利となるが、各地域で行われるローカル競技ではルールはまちまち。船の先頭に乗った「奪旗手」がゴールの旗を早く奪ったチームが勝ちというルールもあり、一瞬でも早く旗を奪おうと体を限界まで伸ばし、時には落水してしまう「奪旗手」のエキサイティングな様子を楽しむことができる。

■地域ごとに異なるスタイルも魅力

また、国際大会は直線の幅広い川で行われるのに対し、ローカルなレースではそこまで川幅が広くない上に蛇行した川や、頭上にいくつも橋がかかる狭い運河をコースにするものもあり、スピードだけでなく高度なテクニックも求められる。難関を次々とクリアして進んでいく様子はまさに壮観だ。また、江西省九江市で行われるレースでは、川の浅瀬に無数のボートが並び、号令とともに最後列の漕ぎ手が全力でダッシュしてボートに乗り込み出発するというユニークなスタート方法が採用されており、その様子はまるで古代の戦場のよう。動画からは現場の熱狂ぶりがひしひしと伝わってくる。

各地を代表する選手たちは地元の名誉をかけてレースに臨み、そのために血と汗が滲むような練習を重ねる。その成果を十分に生かし、高速で一糸乱れぬ動きを見せるチームの漕ぎっぷりは実に惚れ惚れするほどの美しさと力強さを持つ。スピード感とスリル、そして一体感。これこそがドラゴンボートレースの魅力だろう。

■各地でイベントが目白押し

この時期に行われるドラゴンボートレースは枚挙にいとまがないが、最も規模が大きいのは広東省東莞市だろう。5月1日に「東莞市ドラゴンボート月間」が始まり、1カ月以上の期間にレースを含む50以上のドラゴンボート関連イベントが開かれる。開幕当日には、昨年のイベントを終えて土の中に埋められていた舟を掘り起こす「起龍」の儀式が行われ、市全体がお祭りムードに包まれた。広東省陽江市江城区では5月26〜31日にかけてレースが行われ、中でも51人乗りの船が川を逆流して進むという伝統的なレースが見ものだ。

四川省成都市で5月31〜6月2日に開かれる「天府端午節ドラゴンボート大会」は、8月に同市で行われるワールドゲームズでドラゴンボートが初採用されたことを祝って例年より盛大に行われ、歴史あるドラゴンボートレースに加え、地元の伝統文化やグルメなどが楽しめるイベントが目白押しだという。