吉林省長春市にある中国科学院長春光学精密機械与物理研究所の研究チームが1月8日、深海微生物の「現場分離装置」の開発に成功した。この装置は、従来は難しかった深海の極限環境における微生物の検出・分離を現場で実現するもので、国内外でのこの分野の空白を埋める成果となった。
■深海微生物の研究が難しい理由
深海には未知の微生物やその他の物質資源が豊富に存在しており、その研究は生命の限界について理解を深める助けとなる。しかし、深海は高圧、高塩分、低温といった極限環境であるため、研究にあたってはさまざまな困難が伴ってきた。しかも極限環境に適応して生存する微生物の約90%は現場環境から離れた場所では培養が困難であるなど、採取や培養、種の同定、データ分析といった多くの課題に直面している。
■革新的技術の導入で現場検出・分離装置を実現
この課題に対応するため、研究チームは、ラマン分光(物質の分子構造を調べるための光学的手法)や光学トラップ(レーザー光を利用して微小な物体を操作する技術)、マイクロ流体制御といった技術を基盤として、深海微生物を現場でリアルタイムかつ迅速に検出・分離できる装置を開発。1500メートル級の深海で微生物の検出と分離を実現した。
■深海環境への対応技術も貢献
チームはさらに、深海環境における数々の工学的課題も克服。例えば、耐高圧仕様のサファイア製窓と分離装置の光学システムとの構造的互換性を確保するために、乾式・湿式を組み合わせた専用の複合機能コンパートメントを開発したほか、1500メートル級の深海水域を模した環境を再現した上で専用の多波長対応顕微鏡対物レンズを開発し、深海微生物の高解像度かつ広視野の画像取得を可能にした。
また、深層学習アルゴリズムを活用し、深海データの希少性稀や信号ノイズ比の低さといった課題を克服することで、深海微生物の現場検出・分離を支援した。この研究成果は、深海環境の理解とその微生物資源の探索に新たな道を切り開くものであり、科学技術の応用範囲をさらに広げるものとして期待されている。
(出典:https://politics.gmw.cn/2025-01/09/content_37787347.htm)