「光明邨(グアンミンツゥン)」は上海人なら誰でも知っている老舗レストランであり、各種惣菜のお店でもある。

中でも有名なのは月餅。上海エリアの月餅は日本人が通常想像する月餅と異なり、「蘇州式月餅」という種類の、かじるとホロっと崩れるパイ生地に肉が詰まったもの。「鮮肉月餅（新鮮な肉の月餅の意味）」と呼ばれている。ちなみに日本人が想像するずっしりとしたアンコが入った月餅は「広東式月餅」である。

「光明邨」の月餅は近年人気を集めている。最も月餅を食べるシーズンである中秋節(秋のお月見)が近づくと、淮海中路（ホワイハイチョンルー）にある「光明邨」本店では、できたての月餅を買い求める長蛇の列が風物詩となっている。この待ち時間はなんと５、６時間に及ぶ日もある。あまりの人気ぶりに、通常価格よりも高い値で販売する転売屋も現れるほどである。

この月餅を求める特に長い列にも驚かされるが、光明邨は実は年中行列が途切れない店でもある。いつもお惣菜や月餅を買う客が並んでいるのである。

上海の随一の繁華街、淮海中路にある「光明邨」本店は1990年代に開業した。それ以前は現在地の対面にある場所で1956年より、鍋貼(焼き餃子)や肉まんを販売していたという。1990年代の淮海路の大規模開発により大きな店舗となり、1階で肉月餅や惣菜を販売し、上階はレストランという今の店舗スタイルになった。

「光明邨」で扱っている料理はどれも上海料理である。上海料理は見た目醤油を多用した茶色、味付けは甘めが特徴。上階にあるレストランは、2階は市民的な価格で、気軽に上海料理を楽しめ、3階は宴会など大人数の利用時に使われている。1階の惣菜や月餅を求める長蛇の列もさることながら、レストランも味と価格、雰囲気のバランスが良く、休みの日や週末の食事時は行列ができる。

そんな「光明邨」のレストランで上海料理を味わった。

「光明邨」で注文する際には注意点がある。このお店、注文は先払いのシステムになっている。注文の順番を説明すると、テーブルにつくとスタッフから紙のメニューと鉛筆を渡される。各メニュー名称横には四角いマークがあり、注文したいメニューがあればその四角にチェックマークを入れる。チェックマークを入れるのを終えたところでスタッフを呼び、注文メニューの確認をする。確認が終了したらメニューの紙を持ってレジへ行き、支払いを済ませる。テーブルに戻ったらスタッフに支払いが完了したことを告げる。

この日頼んだメニューは以下。

ジュウジュウと音を立てて運ばれてきたのは、「鉄板海鮮日本豆腐（ティエバンハイシエンリーベンドウフ）」。海鮮は魚介類の意味。中国では「日本豆腐」とは絹豆腐よりも柔らかで滑らかな卵豆腐を指す。箸でそうっと取らないとほろっと崩れてしまうので、れんげ使用をお勧めする。

この料理、見た目は赤い唐辛子のようなものが見え、辛そうに見えるが正体は辛味のないパプリカ。アサリ、イカといった魚介にパプリカ、玉ねぎ、それから卵豆腐を甘め強めの甘辛あんで閉じている。つるんとした食感が後引く美味しさの料理。

「八宝年糕辣醤（バーバオニエンガオラージャン）」。こちらは上海料理の定番メニュー。元は四川料理のメニューだったものが長い年月をかけて上海スタイルになった。辛い料理で有名な四川料理なものの、上海料理に転換されるとこちらも甘め強めの味になる。

具沢山で、グリーンピース、えび、ピーナッツ、豚肉、マコモダケなどが入っている。どれも食材は小さめに揃えている。年糕（ニエンガオ）とはお餅のことだが、日本の延びてくっつくお餅というよりも、韓国料理に使われるトッポギとほぼ同じもちっとした食感のお餅である。これも小さいサイズに切られ、調味料と炒め合わされている。れんげで様々な食材を一緒くたにすくって食べると、食感や味が異なる食材が一気に口に入り面白い。

気温が下がってきており、身体を温めたく頼んだのは「菌菇魚面筋砂鍋（ジュングーユーミエンジンシャーグオ）。菌菇はきのこを指し、ここではシイタケとエノキが使われている。魚面筋は白身魚のすり身と澱粉を混ぜた生地を揚げたもの。一見すると柔らかい揚げ豆腐のようにも見える。とてもふわっとした食感で美味しい。砂鍋（土鍋）で運ばれるので保温が長くもつのもありがたかった。

来店時は平日夜の１９時過ぎで閉店時間近かったこともあり、並ぶことはなかったものの、テーブル席はほぼ埋まっており、人気の高さが伺えた。上海人に愛される上海料理を味わいに光明邨を訪れてみてはいかがだろうか。

光明邨

住所：上海市淮海中路588号

営業時間：11:00-14:00、17:00-20:30

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