暴風雨体験にポルシェ送迎の超ラグジュアリー、とんでもない方向に進む中国のスパ文化

■瀋陽で巻き起こる「雷鳴と暴風雨」の衝撃

中国・遼寧省の瀋陽において、既存の入浴概念を根底から覆す新たなエンターテインメントが若者の間で熱狂的な支持を集めている。その正体は「雷鳴と暴風雨の入浴」と呼ばれる没入型体験だ。

小红书@大力克

利用者は40度前後の恒温プールに身を浸しながら、LEDモニター、精巧な音響システム、そして縦横無尽に水やミストが噴射されるシステムを駆使した「渡劫」(天罰としての試練を乗り越えること)を彷彿とさせる劇的な演出に身を投じる。

これはもはや単に身体を洗う行為を超え、視覚・聴覚・触覚を刺激する4Dエンターテインメントだ。日常の凄まじいストレスを劇的な演出の中で発散したい、あるいは未知の刺激をSNSで共有したいという若者たちの好奇心を完璧に捉えたこのプロジェクトは、瀋陽市内にとどまらず全国各地から客を呼び寄せ、週末には3時間待ちの行列が常態化するほどの社会現象を巻き起こしている。

小红书

■「売り文句」と現実の落差が生む、予想外のリアリティ

この暴風雨湯泉では、3Dスクリーンや立体音響で落雷や嵐を再現し、微弱な電流で身体を刺激する演出も加わっている。一方、実際の体験が「話と違う」という意見もある。

例えば、施設側は40度の温水を謳っているのに、利用者からは「実際の水温は30度前後で体温より低く、激しい雨に打たれると震えるほどだ」という声も上がっている。それじゃインチキじゃないか、とも思うのだが、実はこの「売り文句」とは異なる物理的な厳しさが、逆に演出のリアリティを高める皮肉な結果を生んでいるようなのだ。

施設側が狙ってやっているのか、たまたまなのかはわからない。ただ、体験者は嵐が去った後の静寂や鳥のさえずりに、人生の苦難を乗り越えた後のような安堵感を見出すのである。

ちょっとオーバーな表現になるが、この「死と再生」の擬似体験が、現代の若者にとって生きている実感を確認するための「生命教育」として、深い心理的充足を与えている。生きる意味を見出しづらい今の若者たちだからこそハマるスタイルと言え、このブームが実は現代の中国社会に渦巻く「寝そべり」ムードにつながっている、という点がとても興味深い。

■入浴の枠を超えた「何でもあり」の複合空間

暴風雨スパで分かるように、中国のスパは今やテーマパークや高級ホテルとの境界を曖昧にする「複合型空間」へと大きな進化を遂げた。そこにはかつての大衆浴場の面影はない。

施設内では、チェリーやドリアンといった高級フルーツ、新鮮な海鮮料理が食べ放題として提供され、利用者は一日中飽きることなく食事を楽しむことができる。入浴よりもこちらを目当てに訪れる人も少なくなさそうだ。

氢商业

特筆すべきは、大連などで見られる1399人民元(約3万円)の高額パッケージを提供する超高級路線の台頭。こうした施設では、ポルシェによる送迎サービスが提供され、アメニティにはエルメスのシャンプーやYSLのヘアケア用品が惜しげもなく並ぶ。

曲水蘭亭や蘇果湯泉といったブランドが主導するこのラグジュアリー化は、消費者に「手の届く贅沢」としての圧倒的な満足感を与えている。浴場が単なる休息の場ではなく、自らのステータスを確認し、非日常に浸るための「サンクチュアリ」となっているのである。

Z世代のライフスタイルに合わせて、さらに進化する中国のスパ文化

また、Z世代にとって、スパは「洗刷班味」(仕事の疲れや「社畜感」を洗い流すこと)のための重要な拠点にもなっている。静寂な休憩エリアを「自習室」として活用し、温泉でリフレッシュしながら論文を執筆するなど、その利用方法はとても実用的だ。

また、企業が忘年会の会場にスパを選ぶケースも増えている。各自が風呂やサウナ、食事を自由に楽しめ、全員参加の余興や一発芸を強いられずに済む点が若者から歓迎されているのだ。

小红书@喵斯特洛夫斯基

このような現代の中国ならではのスパ文化は、海外のインフルエンサーからも「東方の神秘的な力」として驚きを持って受け止められている。身体を清めるという原始的な行為を出発点に、ここまで変貌を遂げた中国のスパが、この先も我々の想像の外側へ進化し続けることは間違いないだろう。

X
Facebook
Email

関連記事

Copyright 株式会社フライメディア 2024  

Tel: 03-5843-3063 〒170-0013 東京都豊島区東池袋2-44-2庄司ビル2F

  Inspiro Theme by WPZOOM