実在していてもおかしくなさそうなのに、バーチャルな世界にしか存在しない「デジタルヒューマン」。デジタル技術の進歩、そしてAI技術の進歩に伴ってその「リアリティ」は益々高まっており、近頃ではデジタルヒューマンのアイドルや歌手、アナウンサーなどを見かけるようになった。2019年に登場して話題を集めた「AI美空ひばり」のように、すでにこの世にいない人物を「蘇らせ」て会話をするといったことも可能になっている。実在した人物のバーチャル化は過去の映像や音声のデータをできる限り集め、より本人に近い自然な形に仕上げていく上での難しさがあるものの、デジタルヒューマンを新たに生み出すこと自体は、もはや莫大な時間と労力を必要とする作業ではなくなりつつあるようだ。
■社会のさまざまな分野に進出するデジタルヒューマン
中国では2018年、初めての「AIアナウンサー」が誕生して以降デジタルヒューマンはさまざまな分野に進出し始めている。単にニュースを読むだけではなく、他の出演者と意思疎通を図りながら番組を進める「AIアンカー」も登場したほか、AIアイドル、AIカスタマーサービス係、AI受付係などが存在する。そして19年には中央芸術美術学院大学院生という設定のAIアーティスト「夏語氷」が卒業作品展にオリジナルの作品を出品して話題を集め、21年には中国屈指の名門大学・清華大学に初の「AI学生」となる「華智氷」さんが入学、学業の傍らで作詞やピアノ、ギターの弾き語りを嗜むなどの多才ぶりで衆人を驚かせた。
■百度、製作コスト・費用を大幅カットする技術を開発
日々進化していく中国のデジタルヒューマン界を牽引するIT企業の一つが百度(Baidu)だ。同社はAIデジタルヒューマンプラットフォーム「曦霊」によってさまざまな分野にデジタルヒューマンのソリューションプランを提供しているが、百度集団の副総裁である袁仏玉氏が7月6日、同21日に開かれる同グループの技術カンファレンス「Baidu World」に関する発表会にて、「AIアルゴリズムのブレイクスルーによりデジタルヒューマン製作コストは100万元クラスから1万元クラスに低下し、製作サイクルも数ヶ月から数時間のレベルにまで短縮されることになるだろう」と語った。
■人間同様に対話し、クリエイティブする存在に
また、「Baidu World」ではデジタルヒューマンによるライブプラットフォームを発表し、ハイパーリアリズムデジタルヒューマンが24時間完全AIライブを実施してグループやブランドのPRを行うという。さらに、百度では人間の能力に匹敵するほどの強力な自然言語処理モデルERNIE、対話生成用AIモデルPLATOをバックボーンとして、AIによるコンテンツ自動生成(AIGC)能力の強化に取り組んでおり、デジタルヒューマンに超強力な創造力を持たせ、既存のコンテンツ生成形式を根底からひっくり返すことを目指しているとのことだ。
どんどん進むAI技術とデジタルヒューマン技術の発展ぶりにはただただ驚かされるばかり。ますます生身の人間に近づいていく彼らに対してワクワクする気持ちを抱く一方で、些かながら恐ろしさすら感じてしまう。
(出典:https://news.cnstock.com/news,bwkx-202207-4914810.htm)
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