世界へ広がる百度の自動運転タクシー「Apollo Go」

中国の検索大手・百度(バイドゥ)が展開する自動運転配車サービス「蘿蔔快跑(Apollo Go)」が海外展開と商業化の新たな段階を迎えている。

Apollo Goは2021年8月にサービスを開始して以降、すでに北京、上海、広州、深セン、重慶、武漢など中国国内の10以上の都市で一般営業が行われている。武漢では24年に24時間体制での完全無人運行を実現しており、北京や重慶、深センなどでも車内に安全監視員が乗らない完全無人での自動運転サービスやテストが進められてきた。

百度の発表によれば26年8月時点で自動運転の累計走行距離は3億5000万キロを突破。そのうち完全無人での走行距離も2億4000万キロを超えている。26年6月までの一般乗車回数は累計2300万回以上に達した。

■香港での完全無人テストと1000人規模の一般試乗イベント

中国本土での実績を土台として、現在は香港や中東、欧州などへの進出が急速に進んでいる。

香港では24年11月末に最初の試験ライセンスを取得して以降、段階的にテスト範囲を広げてきた。26年7月には香港国際空港がある空港島にて、世界初の「右ハンドル・左側通行」における完全無人公道テストを開始した。8月には高速鉄道の香港西九龍駅とエアポートエクスプレスの九龍駅を結ぶ連絡運行の路面テストも始まった。

10月21日から11月3日までの間、1000人を超える住民を招待して全長5.1キロ、乗車時間約15分の一般試乗イベントも行われている。

■中東や欧州など世界各地で加速する現地企業との提携

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイやアブダビには25年3月に進出。26年1月にアブダビで現地のAutoGoと組んで完全無人商業運行を開始し、3月30日にはドバイで完全無人での商業運行を正式にスタートさせた。4月には現地のドバイ・タクシー・カンパニーと提携して海外で初めて自社の専用アプリを使った配車サービスを始め、8月にはドバイで配車大手のウーバー(Uber)のアプリから自動運転車両を呼べる仕組みを整えた。

さらに欧州では、スイスの大手バス運行会社と協力して「AmiGo」というサービス名で26年6月に公道テストを始め、レベル4の自動運転タクシー運行許可を取得した。英国ロンドンでも、7月28日にウーバーなどと連携して公道でのテスト走行を開始した。このほか、7月にはカザフスタンの企業とも戦略的提携を結び、現地への無人車両導入に向けた模索を始めている。

■路上での車両停止トラブルとネット上のデマに対する法的措置

破竹の勢いで世界進出を続けるApollo Goだが、事業規模の拡大に伴って実際の運行における課題も浮き彫りになった。26年3月31日には、武漢の一部地域で複数の車両が道路の真ん中や高架上で停止して動けなくなる事態が発生。幸いけが人は出なかったが、運営側は通信障害によるシステム異常や輸送力の逼迫を理由として挙げている。

また、インターネット上での誹謗中傷やデマに対する法的な対応にも追われている。26年3月と6月には、自動運転タクシーを「世界最大の詐欺」などと根拠なく貶めた企業に対する名誉毀損訴訟で勝訴し、相手側に謝罪と損害賠償を命じる判決が確定した。7月末には、無関係な音声や映像を百度の車両映像とつなぎ合わせ、誤解を招く動画を拡散した複数のSNSアカウントを提訴した。

■「進出都市の数」から「車両1台あたりの採算性」へ

知名度と運行規模の拡大に取り組んできた百度の自動運転事業だが、目標が「いくつの都市に進出したか」から、「1台あたりでいかに効率よく利益を出せるか」へと移りつつある。

ロボタクシーは人間の運転手への報酬が不要になる一方で、車両の購入費や高性能なセンサー、コンピューターシステム、日々のメンテナンス、保険、さらには遠隔監視や配車システムの維持などに多額のコストがかかる。また、運営管理に必要な現地の高い人件費や修理費、各国の厳しい規制への対応コストなども最終的な利益を左右する。

車両の稼働率が低ければ、減価償却費や維持費が収益を圧迫し続けることになる。持続可能な経営を実現するには、稼働率の向上が最重要課題なのである。

■百度のAI事業転換における位置づけと今後の課題

現在、百度は会社全体として人工知能(AI)を中心とした事業構造への転換を急いでいる。主力であるオンライン広告事業が苦戦するなか、自動運転事業が独立した収益の柱へと成長できるかどうかは、百度の将来を大きく左右する。単なる技術の披露や都市数の拡大にとどまらず、進出先の各都市で1台ごとの採算性を確立して持続可能なビジネスモデルを築けるかどうか。Apollo Go、そして百度は新たなチャレンジのフェーズに入っている。

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