今年の春節(旧正月)直前だった1月末に彗星のごとく登場し、中国国内ののみならず世界に「低コストながら高性能な大規模AIモデル」の成功例を示してセンセーションを巻き起こしたDeepSeek。その創始者である梁文鋒氏が、このほど発表された世界の富豪ランキングに初めて名を連ねた。

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■「胡潤全球富豪榜」に初登場
英国人のルパート・フージワーフ(中国名:胡潤)氏が中国で設立した民間シンクタンク「胡潤研究院」が3月27日、世界の富豪ランキング「胡潤全球富豪榜」の2025年版を発表した。その中で、DeepSeek創業者である梁氏が資産330億元(約6600億円)で初めてランキングに登場した。また、DeepSeekのライバルである米Open AIの創始者であるサム・アルトマン氏も資産130億元(約2600億円)で初めてランクインした。なお、このランキングに掲載されるのは資産総額が10億米ドル(約72億元、約1500億円)の「ビリオネア」であり、今年は前年より5%(163人)多い3442人の名前が記載された。
■クオンツ投資からAI分野へ
梁氏は1985年に広東省湛江市で生まれ、浙江大学の大学院を卒業。2008年から量的ヘッジの研究を開始し、15年に幻方量化公司を設立した。高度な数学的手法により各種投資を行うクオンツ投資で着実に資産を拡大し、やがて中国のクオンツ投資私募ファンド「四天王」の一つと呼ばれるようになった。そして23年7月には大規模AIモデル開発企業DeepSeekの設立を発表し、汎用AI分野に本格的に参入。今年1月のDeepSeek-R1モデル発表によって一躍世界の脚光を浴びるに至った。
■DeepSeekの成功で早くも超富裕層の仲間入りか
胡潤研究院によれば、「胡潤全球富豪榜」2025年版のデータは今年1月15日現在の資産額を基準にしているとのこと。つまりは「DeepSeek-R1」発表前の段階ですでにクオンツ投資によって巨額の資産を獲得しており、そこに「DeepSeek-R1」の成功が重なったわけだ。今回のAI分野での成功により梁氏は世界的な超富裕層の一人になる可能性が高いと見られており、今年2月にブルームバーグがスタートアップ創業者やAI専門家への調査から発表したデータによると、DeepSeekの評価額は少なくとも10億ドル(約1500億円)、多く見積もれば1500億ドル(約22兆5000億円)以上に達するという。
ランキングを主宰する胡潤氏は、梁氏がDeepSeekの80%以上の株式を保有しているため、今後同社の評価額がOpen AIと同水準、すなわち1兆ドル(約150兆円)にまで達すれば中国一の富豪になる可能性があるとコメントしている。
■「中国一の富豪」の道のりは
AIモデル業界にセンセーションを巻き起こし、一般市民のAIモデルへの関心を大いに高めたDeepSeekだが、今後待ち受けるのは中国国内、ひいては世界のライバルとの間で繰り広げられる激しいAIモデル競争だ。すでに百度や騰訊など中国のIT大手が次々と新たなAIモデルをリリースし始める中、DeepSeekがどのようにして優位性を保っていくかが大きな課題となる。今後も革新的なAIモデルをリリースできれば、梁氏が「中国一の富豪」に踊り出る日もやってくるかもしれない。
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