台湾ロケ・仕事の意義があったと感じています

今回、台湾ロケのコーディネーターを務める機会に恵まれたことは、私にとって非常に忘れがたく、そして強い感情の重みを伴う経験となりました。

撮影の舞台となったのは、台湾・屏東県竹田にある「徳旅店民宿」と、歴史を持つ一台の古い金庫です。コーディネーターとしての私の仕事は、単なる現場対応にとどまるものではありませんでした。

番組企画の準備段階から、民宿のオーナーと継続的に連絡を取り、金庫の背景や歴史的な経緯、そしてご家族の物語について丁寧に確認を重ねてきました。

 

 

そのやり取りを通じて、この金庫が単なる金属製の箱ではなく、家族の記憶を閉じ込めた「時間のカプセル」であることを、次第に理解するようになりました。この金庫は精米工場が建てられた当時から存在していたものです。かつては糧食局の帳簿や配給票、重要書類を保管するために使われ、地域産業が最も栄えていた時代を見守ってきました。そして、精米工場が廃業して以降は、静かに時を重ねてきました。オーナーの記憶によれば、金庫が最後に開けられたのは、ご両親が健在だった30年以上前のことだそうです。

 

2021年に民宿がオープンしてから、この金庫は再び日常の中に姿を現しました。オーナーは長年、この金庫をもう一度開けたいと願いながらも、中に眠るかもしれない過去と向き合うことへの恐れ、あるいは何も入っていないかもしれないという不安を同時に抱えていました。

その揺れ動く心情は、何度も重ねた会話の中で、強く伝わってきました。だからこそ、番組制作側も撮影前には細心の注意を払い、所有権の確認を徹底するとともに、「金庫を破壊しない」というオーナーの強い意向を尊重しました。

 

 

彼女は、この金庫を「祖父から残された一つのメッセージ」のような存在だと語り、「正しい時に、正しい人によって開かれるべきもの」だと話していました。

 

撮影は、屏東の徳旅店民宿にて行われました。

精米工場の糧食局を改修して生まれ変わったこの建物自体が、家族の歴史と地域の記憶が交差する一本の時間軸のような存在です。

外壁の洗い出し仕上げに残る米粒のような質感や、意図的に保存された旧構造の痕跡など、空間そのものが静かに物語を語っていました。

そして、ついに金庫が開いた瞬間。
現場の空気は、まるで時間が止まったかのように静まり返りました。
中に何が入っていたか以上に印象的だったのは、その時にオーナーの表情に浮かんだ、世代を越えて過去と向き合えた安堵の表情でした。その場にいた全員が、心から彼女のために喜び、この家族の物語が丁寧に紡がれたことに深い感動を覚えました。

 

番組は2026年1月1日に放送され、視聴率も良好な結果となりました。
しかし、この案件の価値は数字だけでは測れません。
「人の感情を、どれだけ誠実に、そして完整に伝えられたか」――そこにこそ、この仕事の意義があったと感じています。

 

歴史、家族、空間、そして感情が交差するこの企画に携われたことを、心から光栄に思います。
これは単なる撮影業務ではなく、一つの物語がきちんと語られるまでの、大切なプロセスでした。

 

台湾での撮影・取材に関する各種手配について、柔軟に対応いたしますので、お気軽にご相談ください。
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