香港精神の象徴:赤いミニバス

2024年12月の香港ロケで訪れた「ミニバス看板資料館」に関して背景を紹介させていただきます。

  

運営方式

1980年代における香港の赤いミニバスの運営方式は、非常にユニークでした。

運行ルート、運行時間、運行便数、運賃料金

これらはすべて明確に決められておらず、さらに、運営許可なども政府の規制を受けていませんでした。

固定の路線がないため、乗客はミニバスに掲示されている行き先看板を見て判断します。赤い文字は終点駅、青い文字は通過駅を示しているので、どこを通るかを確認して乗車するのです。降りたい場所に近づいたら、事前に大きな声で運転手に伝え、近くの停車可能な場所で降ろしてもらいます。車内で通用するのは現金のみで、運転手が乗車距離に基づいて料金を決めますが、その基準は明確には決まっていません。この大らかさこそが香港ミニバスの大きな特色です。それだけに、行き先を示す看板はミニバスにとって非常に重要なアイテムでした。

そして香港人に愛された赤いミニバスは、彼らにとって大切な共通の思い出でもあります。

●80年代の香港と赤いミニバス

1980年代は香港経済発展の黄金期であり、赤いミニバスはこの時代の香港社会文

化の象徴の一つでした。当時の社会は活気に満ち、繁栄と躍動感にあふれていました。赤いミニバスは香港の民主、自由、高効率、そして機会と競争が共存する姿を体現していました。

 

●ミニバス看板職人Makさんの資料館

今回訪れたのは、ミニバス看板職人のMakさんが創設した「ミニバス看板資料館」です。ここでは、香港らしいお土産としてミニバス看板のキーホルダーなどを販売しています。

Makさんは1973年、15歳のときに職人人生をスタートし(2025年現在67歳)、赤いミニバスと共に黄金期を経験しました。やがて電子技術の発展や二階建てバスの導入により、ミニバスは次第に街から姿を消していきましたが、Makさんはこの貴重な文化と香港人の記憶を残したいと考え、ミニバス看板をさまざまなグッズにして販売するようになりました。レトロで香港らしいMakさんのデザインは、海外の旅行雑誌などにも紹介され、旅行者や香港人の間で人気となっています。現在も店舗には多くの人が訪れています。

 

●ロケの思い出

今回のロケでは、Makさんに手書きの看板を実際に制作していただき、その様子を間近で見せてもらいました。筆を走らせる一つ一つの動作に長年の技術と経験が詰まっており、その職人技に思わず見入ってしまいました。

 

また、Makさんはとても親切で温かい方で、制作の合間にもミニバスの歴史や自身の経験を丁寧に語ってくれました。特に、看板づくりが全盛だった時代の話や、香港の街角で古い看板を見かけると当時の思い出が蘇るというエピソードには深く共感しました。

さらに、ロケのために特別にオリジナルのキーホルダーを用意してくださるというサプライズもありました。細部にまでこだわったデザインで、まさに香港の文化が詰まった一品です。

休日にもかかわらずご協力いただき、本当に感謝しています。Makさんの情熱と温かさに触れ、香港の貴重な文化を未来に残していきたいという思いを新たにしました。

 

香港での撮影を通じて、多くの魅力を発信し、
視聴者に新たな発見を提供するお手伝いができれば幸いです。
皆さまからのご連絡を心よりお待ちしております!