重慶の人気グルメ1位、食べ物ではなかった!?

■駅が「必食グルメ」1位に?重慶で起きている珍現象

中国四大料理の一つ、四川料理のお膝元であり、火鍋が有名な重慶市の「必食グルメランキング」に今、異変が起きているという。食べ物ではないものが1位に躍り出たのだ。それは、市内を走るモノレールの「李子壩(りしは)駅」。なぜ、食べられるはずもない「駅」が「必食グルメ」として注目を浴びたのか。

その答えは現地を訪れればすぐに分かる。観光客が列をなして空を見上げ、「口を開けて、電車が来るぞ!」と声を掛け合いながら、大きく口を開けてモノレールを待つ不思議な光景に出会うからだ。李子壩駅はマンションの中に建てられており、建物に自分の顔を合わせると、列車がまるで口へと吸い込まれていくような写真が撮れる。これがブームとなり、今や重慶観光に欠かせない「儀式」になったのである。

■進化し続ける「モノレール食い」

かくして「重慶No.1グルメ」の座を手に入れた李子壩駅だが、観光客はもはや単に口を開けて「食べる」だけでは飽き足らず、アクションをさらに進化させている。「重慶」と記された扇子を広げたりサングラスをかけたりして江湖の豪傑を気取り豪快にいただこうとする者もいれば、紙袋や帆布のバッグを用意して、通り抜けるモノレールを瞬時に「テイクアウト」して袋に詰め込むような仕草を見せる者もいる。遠近法を巧みに操り、指先でモノレールをつまんだり、手のひらで巨大な車両を支えたり……といった具合に、次々と新しいバリエーションが生み出される。

地元のプロカメラマンも商機ありと見てブームにしっかりと乗っかっている。観光客に小道具を貸し出し、ベストな瞬間を逃さないようポージングを丁寧に指導してくれるのだ。

不思議な光景が生まれた切実な理由

そもそもなぜ、マンションの中に駅があるのか。重慶は山がちな地形で平地が少なく、地盤も硬いため、地下鉄の建設には不向きな都市だ。そこでモノレールが交通の主役に選ばれたのだが、今度は「平地が少ない」という問題が立ちはだかった。1998年の計画当時、李子壩の土地には駅と住宅、両方を建てたいという要望が重なっていた。他の都市なら別々に建設できるところだが、重慶ではそれができない。そこで苦肉の策として生まれたのが、駅とマンションを一体化させるという設計だった。

しかし、単に建物の中に駅を作ったのでは騒音と振動が大きくなり、列車が発着するたびに住民が恐怖と不快を覚えることになる。そこでエンジニアたちは「駅橋分離」と呼ばれる構造を採用し、モノレールの軌道を支える杭と建物を支える杭を完全に切り離した。また、空気バネとゴムタイヤの採用により走行音も抑えられており、真上の住民への影響は最小限にとどめられている。

「食べる」写真が成立するあの光景は、重慶の地形と、それに応じた精巧な設計と工法の産物なのだ。

■川の反対側からも「食べ」始めた人たち

李子壩駅の展望台から見上げる構図に続き、最近では嘉陵江を挟んだ対岸からの撮影も新たなトレンドとして注目を集めている。駅下の展望台がモノレールと建物の一体感をアップで捉える構図なのに対し、対岸からは川越しに建物ごと遠景で見渡せるため、遠近法を使って列車を「丸呑み」するダイナミックな動画が撮れると人気だ。夜間は車両の照明が灯り、発光した列車が建物へ飛び込む光跡を対岸から望遠レンズで狙うスタイルも広がっている。

「食べ方」は昼から夜へ、近くから遠くへと広がり続ける。食べても食べても減らないどころか、新しい食べ方が次々と生まれてくる。そこに重慶という街が持つ底知れぬ魅力とパワーを感じる。

■まだまだ進化中の「8D魔幻都市」重慶

李子壩駅は映画のロケ地に採用されたほか、関連グッズが100種類を超えるなど、もはや単なる駅にとどまらない文化的色彩をまとうようになった。また、エスカレーターの増設など観光インフラのさらなる整備も着々と進んでいる。急峻な地形が生んだ立体的な街並みと、そこに集まる人々の旺盛な遊び心が融合した「8D魔幻都市」重慶は、まだまだ進化の途中のようだ。

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