15年ぶりにロフトが香港に戻ってくる。ただし、まずは1年だけ

香港有数の商業エリアである旺角東(モンコックイースト)のMOKO新世紀広場に、黄色いバックに黒い文字で「Opening in August」とだけ書いてある仮囲いが出現した。日本の生活雑貨店「ロフト」が15年ぶりに香港に帰ってくるのだ。

■西武と一緒に消えた香港ロフト

ロフトと香港の付き合いは実はけっこう古い。

ロフトは1987年に渋谷の西武百貨店の別館としてスタートしたが、その3年後の90年には香港・金鐘(アドミラルティ)の太古広場(パシフィック・プレイス)に入っていた西武百貨店の中で出店した。その後は中環(セントラル)や銅鑼湾(コーズウェイベイ)にも店ができたが、2011年6月30日に西武百貨店が閉店すると、ロフトも一緒に香港から姿を消した。

約20年にわたって香港に存在したロフト。あのおなじみの黄色と黒のロゴは、確かに香港市民の記憶の中に残っていたことだろう。復活を心待ちにしていた人もいたに違いない。

■なぜ「1年だけ」なのか

ところで、8月下旬にオープン予定のロフトは、現時点では1年だけの期間限定営業を予定している。なぜあえて期間を区切ったのだろうか。

今回香港にロフトを連れてきたのは、香港企業のYAICHI(谷日百貨)グループだ。日本商品のオンラインモールを運営しており、同じく日本の人気雑貨チェーンである「3COINS」を香港に持ち込んだ実績もある。

3COINSの香港1号店は25年7月に銅鑼湾(コーズウェイベイ)の希慎広場でオープンした。1号店開店当日は朝10時すぎに200人近い行列ができるほどの反響だったが、半年後に2号店を出す段階になっても1号店は収支が均衡していなかった。

また、3COINSが香港で掲げているのは「与日同価」、つまり日本の店頭価格を香港ドルに換算した水準で売るという約束だ。330円の商品なら18香港ドルになる。ところが円安が進むと、換算後の売価は下がっていく。一方で香港の家賃も人件費も物流費も、円相場とは関係なく高いままだ。為替のヘッジはしているが、それだけでは吸収しきれないという。

ロフトを期間限定オープンとしたのは「1年やって反応を見てから先を決める」ためであり、そこには3COINSの「教訓」があったのかもしれない。かなり慎重を期した進め方と言えるが、近年の日系ブランドの海外進出では決して珍しい手法ではないという。3COINSは現在も香港で店舗を拡大中であり、ロフトも軌道に乗れば店舗を増やす方向に進む可能性はありそうだ。

■親会社が変わったロフト

ここまでは香港側の事情だが、海外への再進出に舵を切った要因は、日本国内にもあるのかもしれない。

ロフトの親会社は、この数年で入れ替わっている。セブン&アイ・ホールディングスが24年10月、非中核事業をまとめる受け皿としてヨーク・ホールディングスを設立し、25年9月にその株式の6割を米投資ファンドのベインキャピタルへ売却した。売却額は約8100億円で、ベインは企業価値を高めたうえで、株式の再上場を目指すとしている。

香港側の発表でこの話が出たわけではないので、親会社の交代が再進出を直接後押ししたとまでは言えない。ただ、投資ファンドの下で成長を示さなければならない時期と、15年ぶりの海外再挑戦が重なってはいる。

1年後にどうなるか

黄色い仮囲いは8月に外れる。オープンした店に並ぶのは、化粧品や日本の食品、文房具などで、日本の店舗と同じような品揃えになりそうだ。開店後の数週間は、懐かしさで人が集まるに違いない。問題は、そのあとに続く11か月だ。

15年ぶりのロフトが期間限定のまま終わるのか、常設店に切り替わるのか。開店から半年経っても店に足を運ぶ人がどれだけいるかで決まることになる。

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