
最近、中国のメディアやSNSで「Chinamaxxing(チャイナマキシング)」という言葉をやたらと見かけるようになった。「China」+「maxxing(ネットスラングで”最大化・最適化”の意味)」を合わせた造語で、ざっくり言えば「欧米の若者が中国的な生活習慣やカルチャーを積極的に取り入れている」という現象を指す。
2024年にTikTokあたりで流行った「very Chinese(中国式生活)」や「Becoming Chinese(中国人になる)」の流れを汲んでいて、2025年に入ってからさらに話題になっているらしい。
「らしい」と書いたのは、これが主に中国メディア側の視点で語られている話だからだ。実際に欧米の若者の間でどこまで広がっているのかは、正直なところよく分からない。
手元にあるのは「中国ではそう伝えられている」という事実だけであることは、お断りしておこう。

■白湯を飲んで太極拳をする欧米の若者たち
では「Chinamaxxing」とは具体的に何をするのか。実は、中国の伝統的な健康法「養生」を現代風にアレンジした習慣が中心で、白湯を飲む、室内ではスリッパを履く、クコの実やリンゴを煮出した「リンゴ水」を飲む、公園で太極拳をやって、その動画をSNSに上げるといった行動が人気なのだという。
日本人からすると「おばあちゃんの知恵袋では?」という感じだが、欧米の若者にとっては新鮮な「セルフケアのライフハック」に映るようだ。
生活習慣だけでなく、中国の都市そのものへの憧れもある。重慶や上海の夜景、電気自動車だらけの街並み、高速鉄道のネットワーク。SNSで切り取られたこれらの風景は「未来都市」感たっぷりで、見映えがする。ポップマートのアートトイを集めたり、中国発のティードリンクを飲んだりといった消費行動も、トレンドの一部になっているという。
■背景にあるのは「アメリカへの疲れ」?
中国メディアが特にアメリカでこの現象が起きている理由として強調するのは、アメリカの若者が抱える自国に対する不満だ。政治の分断、治安の悪化、コミュニティの希薄化。そうした問題に疲れた目で中国を見ると、公園で楽しそうに踊るおばちゃんたちや、深夜でも賑わう夜市、家族の強い結びつきが魅力的に映る、というストーリーである。
加えて、治安の良さ、インフラの充実、AIやロボットの爆発的な普及、行政の効率性といった魅力が、TikTokや小紅書(RED)という中国発のSNSアプリを通じてダイレクトに届くようになり、アメリカを始めとする世界の若者に影響を与えている、と中国メディアは言う。
ただ、この話をそのまま受け取るのはちょっと待ったほうがいい。SNS風に言えば「ハイライトリール」だけを見ているようなものだからだ。

■「親中」というより「つまみ食い」
面白いのは、チャイナマキシングが中国文化への全面的な傾倒ではないところだ。唐装とストリートファッションを組み合わせたり、中華粥をおしゃれなカップで食べたり、アフタヌーンティーにクコの実をトッピングしたり。要するに、気に入った要素だけを自分流にアレンジしている。
これは政治的な「親中」とはまったく別の話で、美味しいとこ取りの消費行動に近い。だからこそSNSと相性がいいし、拡散もしやすい。要はファッションなのだ。だから、そこには当然流行り廃りもついてまわる。ということは、飽きられるのも早いかもしれないのである。

■ 結局どう見ればいいのか
チャイナマキシングが本当に欧米の若者の間で大きなムーブメントになっているのか、それとも中国メディアが自国のソフトパワーをアピールするために膨らませた話なのか。たぶん、その両方が少しずつ混ざっているというのが一番正解に近いのだろう。
SNSを通じて中国の日常風景が以前より身近になったのは確かで、それに興味を持つ若者が一定数いるのも事実だろう。異なる文化の中から自分に合うものを見つけて取り入れるという行為自体は、とてもクリエイティブでエキサイティングだ。
なにもそれを「中国文化の台頭」とか「欧米の衰退」とか、大きな話にしなくてもいい。若者が国境を越えて面白いものを見つけてきた、くらいの温度感で眺めておくのがちょうどいいのではないだろうか。



