「世界一危険な空港」の香港・啓徳エリア、一大アミューズメントパークに


■香港にあった「世界一危険な空港」

かつて香港には「世界一危険」と呼ばれる国際空港があった。香港が英国から中国に返還された翌年の1998年7月5日まで運用されていた香港国際空港、通称・啓徳(カイタック)空港だ。1920年代に運用が開始された歴史ある空港で、第2次大戦の被害を経て戦後の全盛期はアジアのハブ空港として大いに栄えたが、需要拡大に伴い大きな空港が必要になりその役目を終えた。

啓徳空港と言えば、何といっても着陸時に空港手前で大きく旋回させながらビルすれすれの高さを飛行する「香港アプローチ」で有名であり、これが「世界一危険な空港」と呼ばれる所以だ。機長の技量によりアプローチの安定感が大きく左右されるため、経験の浅い機長が担当した旅客便は乗客も冷や汗ものだったとか。

■閉鎖後の跡地を利用した「啓徳体育園」が開業

そんな啓徳空港はその後「啓徳クルーズターミナル」に姿を変え、ウォーターフロントの観光スポットとして再出発した。そんな啓徳エリアで今年3月1日、新たなランドマークとなる啓徳体育園(カイタックスポーツパーク)がオープンした。空港の駐車場跡地に建てられ、敷地面積は28ヘクタールを誇る。メインの建物となるスタジアム「啓徳空港主場館」(カイタックスタジアム)は収容人数約5万人を誇り、イベントの内容や形態に合わせてレイアウトを変更できる芝や開閉式の屋根を備えているため、サッカーやラグビーなどのスポーツイベントのほか、コンサートなどの各種文化イベントも行うことができる。

また、メインスタジアムの近くには観客約1万人を収容できる体育館「啓徳空港体芸館」(カイタックアリーナ)もある。座席の8割が移動可能で、バドミントンやバスケットボール、体操、テニス、卓球などさまざまなスポーツの国際大会開催基準を満たしている。併設のサブ体育館では観客500人規模の小さなイベントが開催可能だ。

■園内の大型モールに日本ブランド続々 ジョイポリスの海外初進出も話題

啓徳体育園の敷地内では昨年12月に面積約70万平方フィート(約6.5ヘクタール)の大型ショッピングモール「啓徳零售館」もオープン。200近いショップやレストランが出店しており、日本からもユニクロとGUの共同店舗や、イオンスタイル、牛角といった複数のテナントが顔を揃えている。中でも、日本最大の屋内型遊園地「東京ジョイポリス」の運営会社による海外初のゲームとスポーツの融合アミューズメント施設「JOYPOLIS SPORTS」の旗艦店が入っており、忍者トレーニング体験エリアや、子どもから大人まで楽しめるインタラクティブゲーム、最先端技術を用いた没入型スポーツゲームなどを楽しむことができる。

「スリリングな空の玄関口」から「海の玄関口」に転身し、さらにはスポーツやエンタメ、ショッピングが楽しめる一大レジャーエリアへと新たな変化をみせた啓徳エリア。アジアの一大都市である香港に、新たな「名刺」が加わった。