■リチウムイオン電池の進化と繊維型の可能性
現代の電子機器において欠かせない核心的なコンポーネントであるリチウムイオン電池は、その高エネルギー密度、長寿命、そして高い作動電圧などの顕著な利点により、電子産業や日常生活において非常に重要な役割を果たしており、商業的な蓄電デバイスの主流となっている。その中で高い蓄電性能や柔軟性、そして編み込み可能な特性を持ち、ウェアラブルデバイス分野において大きな可能性を秘めているのが繊維リチウムイオン電池だ。上海市にある復旦大学の彭慧勝教授と王兵傑氏のチームはこのほど、繊維リチウムイオン電池の発展に関する論文を掲載した。論文では繊維リチウムイオン電池の発展過程が概念の提案、連続的な製造技術、産業化応用の3つの段階に分けられており、それぞれの段階で直面した課題とその解決策や技術的な突破口を紹介している。
■繊維型電池の特性と課題
非常に大きな応用潜力を持つ柔軟な蓄電デバイスとして期待される繊維リチウムイオン電池は独特の一方向的な構造を持っており、その優れた柔軟性が着用時の快適さを保つ。さらに、伸びる、曲がるといった動的な変形条件下でも電気化学的な性能の安定性を確保することが可能だ。繊維リチウムイオン電池は通気性のある蓄電織物として編み込むことができ、柔軟性のある他の電子デバイスと組み合わせがさまざまな機能を持つ電子織物を作り出すことができるという。
繊維リチウムイオン電池の研究はこの10年ほどで目覚ましい進展を遂げた。2013年には彭教授のチームが繊維電池に関する最初の論文を発表し、蓄電デバイスにおける繊維構造設計の実現可能性を証明した。その後、さまざまな材料と構造に基づく繊維リチウムイオン電池が次々と発表された一方で、「電池内抵抗は長くなると増加する」といった従来の認識や製造技術の制約により、初期の繊維リチウムイオン電池は長さが数センチ程度に限られ、連続的な製造ができない上にエネルギー密度も低かった。
■工業化に向けたさまざまな技術革新
21年には、繊維リチウムイオン電池の内部抵抗と長さの相関性が明らかになり、連続的製造技術とエネルギー密度向上につながる大きなブレークスルーが実現。繊維リチウムイオン電池の工業化に向けた動きが加速した。さらに、実際の応用における安全性を確保するための研究も進み、多層のネットワーク孔道と方向性孔道を持つ繊維電極の設計とその製造技術が開発されたほか、繊維電極の孔構造に迅速に浸透するモノマー溶液(単量体溶液)を設計。モノマーは重合反応を経て高分子ゲル電解質を形成し、繊維電極との強固で安定した接触界面を作り出して高い安全性と128Wh/kgという高蓄電性能を実現した。これにより、繊維電池の大規模応用が可能となった。
繊維リチウムイオン電池は大きな進展を遂げてきたものの、依然として多くの課題に直面している。まず、実際の応用シーンにおいて、エネルギー密度や出力密度、サイクル寿命などの重要な性能をさらに向上させる必要があり、電池構造の最適化や新型の高性能電極材料の開発が求められる。次に、長期的な安定性と安全性の向上についてもさらなる研究が必要であり、複雑で変化の多い環境においても電池が安定して信頼性のある動作を維持できるようになる固体電解質や高性能封止材料の開発が進んでいる。そして、繊維リチウムイオン電池の応用範囲を広げるためには、並列および直列接続技術やバッテリー管理システムの研究も欠かせない。
繊維リチウムイオン電池は将来、スマートテキスタイル、ウェアラブルデバイス、ヘルスケア、構造電池などの分野で広く応用され、人々の生活にさらなる利便性と驚きをもたらすことが期待される。
(出典:https://news.qq.com/rain/a/20250114A05WE500)