貴州省に「空飛ぶテーマパーク」爆誕!―花江峡谷大橋

世界一高い橋、貴州に誕生!

中国貴州省で9月28日、「花江峡谷大橋」が開通した。この橋は全長2890メートルで、水面からの高さが625メートルと「世界で最も高い橋」であるとともに、主径間は1420メートルで山岳地帯における世界最長の鋼トラス吊り橋であり、大型の交通インフラとして脚光を浴びた。そしてまた、交通設備であると同時に「空飛ぶテーマパーク」としてエンターテインメント性も兼ね備えていることでも注目を集めている。

2時間から2分ヘ」の劇的変化

橋が架かる花江大峡谷は「地球の裂け目」と称されるほど深く険しい地形であり、これまでは峡谷によって隔てられた両岸を移動するのに2時間もかかっていた。しかし、花江峡谷大橋の開通により、その移動時間はわずか2分へと劇的に短縮された。この変化は単なる利便性の向上にとどまらず、地域間の物流を活性化させ、人々の生活圏を広げ、文化交流を促進するなど、地域経済全体に計り知れないインパクトを与えることになる。まさに「天下の険が平坦な道に変わった」瞬間と言えそうだ。

橋が自ら「健康状態」をキープ!?

地域の交通事情を劇的に変える大型橋にとって安全の確保は大きなテーマとなる。この点で、花江峡谷大橋は自らの「健康状態」を24時間モニタリング監視できるというスマートさも持ち合わせているのだ。その秘密は、橋の生命線であるメインケーブルに導入された「スマートケーブル」の技術にある。このケーブルの内部には光ファイバーセンサーが埋め込まれており、橋にかかる力(応力)、温度、そして湿度をリアルタイムで監視し続ける。特筆すべきは、ケーブル内部の湿度が64%を超えると、システムが自動で除湿機を作動させ、内部結露による錆びのリスクを未然に防ぐ自己防衛機能だ。錆は鋼鉄製の橋にとって最大の「敵」であり、この機能により橋を100年以上もたせることができるという。

最先端と悠久の歴史の融合

この橋が持つ特徴の一つは、地球の悠久の歴史を感じられる場所に設置されたということだ。橋の周辺地域は、約2億2000万年前の三畳紀の地層が広がり、「関嶺古生物化石群」が発見される世界的に重要な場所。特に、古代の海洋爬虫類である魚竜の化石が数多く出土しており、太古の生命の記憶が刻まれている。さらに、橋からわずか50キロの距離には、中国最大の滝である「黄果樹瀑布」が雄大な姿を見せる。最先端の技術を駆使した花江峡谷大橋が、世界的な自然遺産や歴史遺産を結ぶ「架け橋」としての役割も担っているということにスケールの大きさを感じさせる。

ただ通るだけじゃもったいない!

そして、花江大峡谷が持つ最大の魅力といえばやはり、テーマパーク的な要素だろう。この橋は設計当初から「橋旅融合」というコンセプトに基づき、通行するためだけでなくさまざまな体験をするための施設として建設された。計画は中国の観光地格付けで最高ランクにあたる「国家5A級景区」の基準に沿って進められ、橋そのものが一つの統合型リゾートとして機能する「リゾートブリッジ」なのだ。

まさに「空飛ぶテーマパーク」

橋の上や周辺には、スリルと驚き、感動に満ちたアトラクションが多数用意されている。600メートル超の高さから峡谷へダイブするバンジージャンプや、巨大な振り子のように空を舞うロープスイング、恐怖心と戦いながら絶景を楽しむ空中歩道「歩歩驚心」などはまさに「空飛ぶテーマパーク」と呼ぶにふさわしいアトラクションだ。アトラクションはちょっと怖いという人のためには、峡谷の底から橋の上まで一気に昇降し、壮大な景色を楽しめる観光用エレベーターもある。

地域経済を動かす一大プロジェクト

さらに、橋の主塔の頂上にそびえる「雲頂カフェ」や、サービスエリア併設のテーマホテル、アンカーブロックを利用したロッククライミング施設、ヘリコプターや遊覧船を利用した多角的な観光体験といった計画も立てられているとのこと。宿泊施設の整備も進められるそうで、地域経済発展の新たな原動力となる一大プロジェクトとなることが期待されている。

夜は光と滝の幻想世界に

花江峡谷大橋では、夜になると「ウォーターカーテン・ライトショー」が行われる。ショー開催時には橋から幅300メートルの滝が流れ落ちるようになっており、これバックに高精度レーザー投影システムが山水画の情景や文化的なストーリーを映し出す。その迫力と光の美しさを前にすれば、時の流れを忘れ、言葉を失うことだろう。

中国では大型連休などを利用してのドライブ旅行が新たなトレンドになりつつあるという。花江峡谷大橋はそんなドライブ旅行にまさにぴったりな「映えスポット」と言えそうだ。

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