大注目の「極限荒野サバイバル」が中国の若者に投げかける、新たな「生き方」

不況や社会不安などを背景に特に若者の間で「躺平」(寝そべり)と呼ばれる頽廃的な風潮が生まれてからすでに久しい中国において、湖南省張家界市の七星山景区で繰り広げられている壮絶なサバイバル大会が注目を集めている。
「張家界七星山・駱駝杯」国際極限荒野サバイバルチャレンジと題したこの大会は、「与えられた簡単な道具だけで荒野を生き延びる」というシンプルでワイルドなルールが特徴。単なるアウトドア競技を超えた過酷なサバイバル生活は、現代社会に暮らす人々の「自然回帰」への強い願望を呼び起こすとともに、そこで生まれる人間ドラマが多くの共感を生むという。

■過酷なルールが織りなす「サバイバル」の真髄
大会は予選を勝ち抜いた精鋭による「準決勝」と「決勝」の2段階で構成されている。10月9日にスタートして現在も行われている準決勝では「一本のナイフで荒野に挑む」をテーマとしており、100人の選手が単独または2人1組でチャレンジしている。持ち込めるものは規定の衣服とサバイバルナイフ1本のみで、過酷な状況を生き抜いた上位10人が決勝に進出できる。

決勝では、準決勝で手に入れたすべての物資がリセットされ、ゼロからの再スタートとなる。準決勝では認められていたチーム結成や相互扶助は禁止され、参加者は指定された4kmの範囲内で避難所の設営、水の浄化、食料調達などをすべて1人で行うことになる。支給される物資は、サバイバルナイフや工兵シャベル、ノコギリ、飯盒といった最小限の道具と、塩や種子などのみ。40日間棄権することなく生き延びることが最低条件で、その中で最も長くサバイバル生活を続けられた人が優勝となる。

■日々減りゆく生存者たちと高額な賞金
準決勝は開始から30日以上が経過し、過酷な環境によって参加者は着実に減少。当初100人だった参加者は、15人にまで絞り込まれた。

極限状態になっても諦めず気力だけでサバイバルを続ける参加者たちのモチベーションを支える要因の一つが、高額な賞金だ。優勝者は最高22万元(約480万円)の賞金が手に入るほか、決勝参加者には10日間生活するごとに賞金が発生すると同時に、継続するか止めるかの選択権が与えられる。止める場合はそこまでの賞金を獲得して競技終了となるが、継続する場合はさらなる賞金獲得のチャンスが得られる一方で、途中棄権すれば全額没収というリスクを背負う。つまり、「止め時」の判断がとても重要なのだ。

このほか、ファンが選ぶ「火起こし賞」「水源濾過賞」「最も好きな選手賞」など10項目の賞が用意されているなど、より良く、より強く生き延びていくことで多くの賞金が獲得できるのが、選手たちにとっては大きな魅力になっているようだ。

■大会の紅一点、都会の「クールビューティー」が示す新たな生き方
この大会で最も注目を集めているのが、現在唯一残っている女性選手の「冷美人」こと楊朝芹さんだ。雲南省出身で、大会前はAI業界で働く都市部の会社員だったが「女性でも絶体絶命の状況で生き残れることを証明したい」という強い意志のもとで参加。サバイバル経験は皆無でのチャレンジだったが、独学で火起こしや野草採取のスキルを習得し、体重を大きく減らしながらも勝ち残っている。

画像

楊さんの強さは「絶体絶命な状況ほど、私は冷静になる」という精神的なタフ。大会前に施したピンク色のネイルを「文明社会との繋がりを保つための心理的な錨」として残している姿が、多くの視聴者の共感を呼んでいる。「強い意志を持ち、ただ静かに生きる」という楊さんの姿勢は、現代の過剰な競争(内巻)や無気力(躺平)とは一線を画した「第三の生き方」としても強い輝きを放っている。

画像


■大会を盛り上げる、個性的な参加者たち
鄧忠濤さんは竹かごを編んだり、土器を焼いたりなど、他の選手が真似できない卓越した技術を駆使することから「老中医(ベテラン漢方医)」と呼ばれ、尊敬を集めている。2000年代生まれの張博林さんは、キウイを採ったり猿の鳴き真似をしたりと、過酷な状況を楽しむような明るいスタイルで人気だ。

画像

恋人への思いをついに断ち切れなくなり32日目に棄権を選択した「荒野一の純情男」こと林北さんや、約1か月かけてデンプンを抽出するための沈殿池を手作りしたものの力尽きた李成勇さん、特種部隊経験者として注目されながら30日目にリタイヤした王昌繁さんなど、残念ながらすでに離脱した選手たちも、さまざまな個性を見せながらのサバイバル生活で大会を大いに盛り上げた。

画像

■大会の影響と今後の展望
この大会が開かれるのは昨年に続いて2回目。その反響はすでに中国国内に留まらず、海外の冒険家からも応援コメントが寄せられているという。主催者は今後も大会を継続し、将来的には優勝賞金を50万元まで引き上げる計画だ。大会が世界各地の冒険家が集まる世界的なイベントとなれば、七星山景区も「アウトドアスポーツ競技の聖地」として世界に名を馳せることになるだろう。

X
Facebook
Email

関連記事

Copyright 株式会社フライメディア 2024  

Tel: +81-3-5843-3063 〒170-0013 2F Shouji Building, 2-44-2 Higashi-Ikebukuro, Toshima-Ku, Tokyo, Japan

  Inspiro Theme by WPZOOM

en_USEN