ディズニーの魔法がさらに進化、まるで生きている雪だるま「オラフ」ロボットの秘密

ディズニーの人気アニメ「アナと雪の女王」に登場するキャラクター「オラフ」。エルサとアナが幼いころに作った雪だるまから生まれ、無邪気で人懐っこいキャラクターで愛されているオラフだが、最新のAI(人工知能)を駆使したロボット技術によって新たな「命」が吹き込まれた。まるで本当の生き物のように滑らかで生き生きとした感情表現を手に入れたオラフが、来年には香港などのディズニーランドに期間限定で登場するという。

■もはや「ロボット」ではないオラフロボット

これまでにもキャラクターを模したロボットは数多く存在したが、この「オラフロボット」はこれまでのロボットと一線を画すといわれている。最大の特徴は「圧倒的な生命感」にある。「ぴょんぴょん」と弾むような歩き方や、体を揺らしながら喜びや驚きを表現する様子は、まさにアニメのオラフそのもの。その動きは「シルクのように滑らか」と評され、従来のロボットが持つ機械的な硬さは微塵も感じさせないのだ。

また、ロボットとは思えないほどのリアルな動きをより一層際立たせているのが、雪だるまの質感を徹底的に再現したディテールだ。体を覆うのは最新の材料科学を用いた柔軟なフォーム素材で、光を反射して新雪のようにキラキラと輝く。これにより、思わず触れてみたくなるような、柔らかそうでフワフワした雪の質感を完璧に再現したのだ。

そして、もう一つの大きな特徴は、自由に会話ができるだけでなく、相手の言葉や行動にリアルタイムで反応するインタラクティブ性だ。公開された映像では、いたずらで彼のトレードマークであるにんじんの鼻を取ろうとすると、たちまち悲しそうな表情を浮かべ、枝でできた腕を振って「やめてよ」と抗議する様子が収められている。また、コミュニケーションの相手が大人か子供かを識別し、子供にはわかりやすい言葉で、大人には映画に登場する細かな言い回しやお決まりのセリフを交えて応答してくれるという。もう、本当に生きていて人間と同じような感情を持っているのではないかと思ってしまいそうだ。

■ 自然な動きの裏には、膨大な反復学習が

オラフの驚くほど自然な動きは、従来とは全く異なるアプローチで開発されたAI技術の存在が欠かせない。オラフの自然な動きを実現するには「物理法則に従わない」という大きな課題を克服する必要があった。そこでディズニーの開発チームが選んだのは、決められた動きのプログラムを書き込むのではなく、AIによる「強化学習」技術を使い、ロボット自身に動き方を「学習」させる手法だった。正しい動きをすれば報酬を、失敗すればペナルティを与え、何度も何度も試行錯誤を繰り返させることで、オラフ自らが最適な動きを作り上げていくのだ。

この画期的な技術はディズニーとAI半導体メーカーのNVIDIA、そしてGoogle DeepMindというエンタメとテクノロジーの巨頭3社の強力タッグによって実現。オラフは仮想空間で超高速の学習を行い、1万時間を超える量のシミュレーション訓練をわずか数日間で完了し、自立歩行をマスターしたのだという。動きを与えられたのではなく、何度も学ぶことによって身に着けたという点もなにか「生き物」らしさを感じはしないだろうか。

■ディズニーしかできないAIロボット開発の理念

多くの企業が「人間の代わりに家事や仕事をする」ための実用的な人型ロボットを目指す中で、ディズニーが最優先するのは、ロボット技術を通じて「キャラクターとの感情的なつながり」を生み出すことだ。その理念はロボットの動作一つ一つにまで影響を及ぼす。例えば、一般的なロボットメーカーが「どうすれば転ばないか」を研究するのに対し、ディズニーは「どうすれば最もカッコよく転べるか」を研究しているのだ。これは、ロボットを単なる機械ではなく、「ゲスト」に最高のパフォーマンスを見せ、楽しんでもらうエンターテイナーとして捉えている証拠と言える。最高のパフォーマンスを求め、何度も何度も試行錯誤する。オラフロボットはまさに、ディズニーの真骨頂というべき存在なのである。

■魔法は、これからも進化し続ける

ディズニーは私たちに「世界には本当に魔法があると信じさせてくれる」ための壮大な試みを進めており、オラフロボットの登場はあくまでその通過点の一つに過ぎないのだ。創業者のウォルト・ディズニーはかつて「ディズニーランドは永遠に完成しない。この世界に想像力が残っている限り、成長し続ける」と語ったという。今後、オラフだけでなく様々なディズニーキャラクターのロボットたちが、アニメを現実の世界の境界を打ち破る「ありのまま」の姿を見せるようになり、人々を新たな「夢と魔法の世界」へといざなってくれることだろう。

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