北京の公園にミニ四駆の隠しコース? 3年気づかれなかった「遊び心」

中国北京市の温榆河(おんゆが)公園に、ミニ四駆のコースとしてそのまま使えそうな構造物があることが話題になっている。「使えそうな」という表現は正しくないかもしれない。なぜなら、景観デザイナーが職権を利用して大好きなミニ四駆のコースを構造物の設計にコッソリ仕込んだものだからだ。

■完成から3年、誰も気づかなかった

新京報記者 刘婧瑜 撮

この構造物を設計したのは景観設計士の王維琦氏で、2022年に完成した。芝生の上に鎮座する瑞雲を模した銀色のリボン状の排水用構造物で、見た目は雨水を流すための設備にしか見えない。ところが、実は溝の幅、壁の高さ、カーブの角度などすべてがミニ四駆コースの公式基準を満たしているのだ。

王氏は「実は設計段階からミニ四駆コースの案として提出して、審査に通っていた」と明かす。公園側にもいわゆる「ミニ四駆世代」が多く、意図を理解してもらいやすかったようだ。

設計図にあるコース

つまり「知っている人は知っていた」のだが、2025年の終わり頃に王氏がカミングアウトするまで、日々公園を利用する市民には全く気づかれなかったという。それだけ、王氏のデザインが巧妙だったということだろう。カミングアウトのきっかけはSNS上で「ミニ四駆のコースになりそうだ」という声が出始めたことだったようだが、本当にコースとして作ったと知った時にはさぞや驚いたはずだ。

■コースを占拠しているのは大人たち

正体が明かされてから、多くの人がコースに集まって車を走らせるようになったが、その主役は子どもたちではない。1980年代、90年代生まれの、ミニ四駆ブームをリアルタイムで体験した大人たちだ。プロ仕様の工具や高電圧バッテリーが入った重厚なツールボックスを抱えてコースに集まり、目をキラキラさせる彼らはまさに子どものよう。かつてのブームの雰囲気が戻ってきた感じだ。

子供を連れてミニ四駆を遊ぶ父親 新華社/鞠焕宗

3歳の息子を連れて「参戦」したある父親は、自分のマシンがゴールする瞬間を撮影しようと夢中になり、息子そっちのけでコースをまたいでシャッターを切っていたという。効率や成果を求められる日常から離れて、利害関係なく純粋に熱中できる公園サーキット。時が止まった空間を、かつての子どもたちの愛車が高速で駆け抜けていく。

■公園の対応が粋だった

公園の排水設備という公共物でミニ四駆を走らせる行為がSNSで爆発的に拡散したとき、多くのファンは使用禁止にされることを覚悟したという。すると公園側は王氏に専用コースの設計を依頼するという粋な計らいを見せた。

「第1回温榆河公園ミニ四駆競速公益レース」現場は大盛況 新華社/鞠焕宗

新コースは利用者の声も反映され、今年はじめに完成。元の構造物より長い88メートルのコースには、立体交差のギミックも盛り込まれた。デザインは、人と人をつなぐ意味を込めて「中国結び」の要素が取り入れられた。

2月8日には公園の主催で「第1回温榆河公園ミニ四駆競速公益レース」も実施。温榆河公園は名実ともに「ミニ四駆公園」となった。

■なぜ規制しなかったのか

構造物でミニ四駆を走らせていた際、利用者たちが設計上の不備を補うため自発的に段ボールや木の板を持ち寄り、ガムテープで補修や拡張を行ったり、即席の立体交差を作ったりしていたという。見知らぬ大人たちが協力して何かを作り上げ、楽しむ。現代の都会では貴重とも言える微笑ましい光景が見られたからこそ、公園側は規制ではなく新コース設置という判断を下したのだろう。

「ミニ四駆マニア」たちが作った臨時コース ネット画像

ある夕暮れ時、誰かがアニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の主題歌を口ずさんだところ、隣にいた見知らぬ人が自然に続きを歌い出した、というエピソードもある。決して交わることのなかった人たちが、ミニ四駆というノスタルジーを通じて確かにつながったのだ。

排水のための溝に設計者がミニ四駆コースの機能を仕込み、それを知った大人たちが本気で遊び始め、公園側も禁止せずに発展させた。北京の公園で起きたこの一連の出来事は、殺伐とした現代生活の中で忘れてしまっていた「遊び心」の大切さを気づかせてくれた。

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