地球温暖化を防ぐために石炭による火力発電を徐々に縮小する動きが世界規模で進んでいる。そこで課題になっているのが、火力発電に代わる新しい発電の手段の模索だ。太陽光や風力、水力、地熱といった自然を利用した発電や、原子力を用いた発電が有力な代替候補とされているが、自然を利用した発電は気候などに左右される可能性が大きく、原子力発電は安全性に懸念があることから、決定的な代替手段が見つかっていないのが現状だ。
また、現在の発電、電力供給体制における大きな課題の一つが「発電したものを蓄えておけない」という問題だ。高コストで場所を取る蓄電池を導入していない多くの一般家庭では、流れてくる電気をその場で消費する必要がある。蓄電技術の普及は、災害発生などで大規模な停電が発生したときにも一定時間自家発電が可能になるなど防災面でも非常に大きな意味を持つ。そんな中で中国が現在開発を進めている技術の一つが、圧縮空気による発電技術である。
中国では今年10月、自国で研究開発された初めての10メガワット級圧縮空気エネルギー貯蔵システムが貴州省で稼働を開始した。圧縮空気による電力貯蔵システムはエネルギーの貯蔵、放出という2つのセクションに分かれており、貯蔵過程ではコンプレッサーを用いて空気を圧縮して貯蔵しておく。そして、必要な時にこの圧縮空気を放出することで電力を発生させるのだ。
電力を貯めておくのではなく、発電するためのエネルギーを貯めておくこのシステムは、電力の専門家からは「超大型の充電用バッテリー」と称されている。今回開発された10メガワットの圧縮空気エネルギー貯蔵システムでは、1日に4万キロワット時の電力を提供することが可能で、これは一般家庭3000世帯が1日に使う電力量に匹敵するという。しかも、化学反応を必要としない純粋な物理プロセスであるため、廃棄物が出ないのも大きなメリットだ。
空気を貯めて圧縮し、放出するエネルギーで電気を作るという非常にシンプルな原理のシステムだが、シンプルであるがゆえにどこまで効率を高めることができるかというのが大きな課題だったという。中国では現在各地で石炭に代わる新たな発電システムや、エネルギー貯留システムに関するプロジェクトが進んでいる。今回の圧縮空気システムはその一つだ。今後各地から様々な新しい発電、蓄電のアイデアが登場し、実用化されていくことで、中国政府が10月に発表した2030年までのカーボンピークアウト・カーボンニュートラルの目標実現はますます現実味を帯びていくことだろう。
(出典:https://m.thepaper.cn/baijiahao_15799364)
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